ツロは、イスラエルの北部、地中海沿岸に拡がる古代フェニキヤの主要な都市のひとつでした。経済的にも、政治的にも、軍事的にも優れた都市国家でした。南ユダはこのツロに目をつけて頼ろうとする動きがありました。これに対して、イザヤはツロの末路を示し、これに頼ることの空しさを訴えています。
1節―14節:ツロの崩壊。
タルシシュ(1節)は現在のスペイン南部の町、キティム(フェニキヤの植民地、1節)はキプロス島かその周辺の島を指すと考えられています。シホルやナイルはエジプトにある地名(3節)、シドンは、ツロの北方にある地中海沿岸の都市国家で、ツロとはあるときは敵対していたが、この時は協調的な関係にあったと考えられています(4節)。ツロの貿易の範囲はエジプトの農産物の輸出入など、まれにみる繁栄を誇っていました。しかし、ツロは滅びてしまい、船で逃げ延びていた民たちは、ツロへ帰ることが出来なくなり、タルシシュへ渡れと言われています(6節)。そして、ツロだけでなく、シドンにも災いが及ぶことから(12節)、この破滅はフェニキヤ全体に及ぶことが示されています。13節と14節については、二通りの解釈があります。アッシリアがカルデヤ(バビロン)を攻略し、ツロを攻撃したとする見解、もうひとつは、アッシリアがカルデヤ(バビロン)を存続させ、そのカルデヤ(バビロン)がツロを攻略するようになったという見解です。後者であれば、カルデヤ人のバビロンの王ネブカデネザルがツロを攻撃したことを預言していると考えられます。そして、これらのすべてのことは、主の御計画の中でなされたことでした。
15節―18節:ツロの回復。
ツロの破壊は絶滅ではなく、回復されることを預言しています。ツロは歴史上、アッシリアの攻撃、バビロンによる攻撃を受け、ついに、ギリシャのアレクサンドロス大王の攻撃により完全に攻略されました。しかし、その後、エジプトのプトレマイオス2世によってツロは復興しました(紀元前274年)。しかし、まだ、17節、18節の預言が成就したとは言い切れない部分が残されています。それは、ツロは、遊女のように、貿易相手を選ばずに、他国の国と交易するようになる(17節)、と記されていますが、そのあと、18節で、ツロの繁栄の利潤は、「主に捧げられる」という預言がまだ成就していないことです。「70年」の解釈についても、まだ未知の部分が残されています。おそらく、終末の時代にあって成就する預言であると推測されます。
きょうの個所は、やはり、諸外国の歴史も、どんなに繁栄を誇っている国々でも、すべては主の御手のもとにあります。主のみこころに背き続けるならその繁栄も衰えてしまいます。
ピューリタンの人たちが迫害を逃れて建国したアメリカ合衆国も、今では、キリスト教国という外面的なイメージとは異なり、大きく変質してしまいました。同性婚を認め、キリスト教の信仰に対する様々な制限を設け、主のみこころに背を向けて生きる国となっています。それは、一気に変質したのではなく、少しずつ、少しずつの変化でした。私たちもバプテスマを受けて、クリスチャンとしての道を踏み出したものですが、いつのまに、気が付かないほどの少しずつの妥協がいつのまにか、取り返しのつかない背教にまで至る危険があります。主による覚醒を必要としています。
清宣教師