神に背き、悲惨を招くような歩みをしているユダの民にたいして、エレミヤは神ご自身のように心を痛めるのでした。迫りつつあるバビロン軍の来襲を、エレミヤは肌に感じつつ、ユダの民に対して悔い改めて主に立ち返るように求めるのでした(1節―11節)。しかし、彼らは耳を閉じたままで、主のことばに耳を開こうとしない。この状態にエレミヤは「私は疲れ果てた」(11節)と言います。エレミヤが主のことばを民に語りかける一方で、エレミヤ以外の預言者や祭司たちは、「平安だ、平安だ」と民たちを、心地よいことばで、安心させているのです(14節)。民たちは、この平安だ、という偽りのことばに耳を傾けて、みずからの行いを改めようとしません。16節では、「四つ辻に立って」と主は語っておられます。つまり、主は「さまざまな道を選ぶことができる所に立って」、正しい道を選ぶように民たちに勧めています。しかし、民たちは「そこを歩まない」(16節)と答えました。どこまでも頑なな民にたいして、もし悔い改めないなら、主はご自分の神殿をも滅ぼされることを示唆しています(20節、21節)。そして、北の地から来るひとつの民(バビロン帝国)によって滅ぼされることを明言されています(22節)。その理由は、ユダの民が、主の律法を退けたからです(19節)。最後の個所では、ユダの民を「廃物の銀」と読んでいます。通常、銀はるつぼのなかで、ふいごの火によって、銀と不純物とに分離されます。ところがまれに、どうしても不純物と銀がまじりあって、銀だけを取り出すことができない場合があります。これは役に立たない銀として廃棄されます。これが「廃物の銀」です。ユダの民は、主の激しい裁きの火によっても、不純物(偶像)を手放すことをしなかったので、廃物の銀として捨てられるのです。その理由は、[主が彼を退けられたからだ]と記されています(30節)。
この辺で、エレミヤ書の時代背景について説明しておきます。ソロモン王の死後、イスラエル王国は、北イスラエル王国(サマリヤが首都)と南ユダ王国(エルサレムが首都)に分裂しました。北イスラエル王国は、偶像礼拝の罪を犯し続け、遂に、アッシリア王国の手でサマリヤは陥落し、民たちはアッシリヤ捕囚として連れ去られました(紀元前722年―721年)。一方、南ユダ王国は、善王ヒゼキヤのもと、アッシリヤ帝国の攻撃に屈することなく、真剣に主に祈り求めて、南ユダ王国は危機を回避することが出来ました。しかし、ヒゼキヤ王の死後、マナセが王となり55年間の長期にわたり、南ユダを治めました。農業や産業が復興し、経済的には繁栄した時代でした。しかし、霊的には最暗黒の時代でした。偶像が、主の宮の庭に持ち込まれ、村にも町にも、郊外にも、ありとあらゆるところで偶像礼拝が行われるようになりました。マナセはまた、主の預言者を迫害し、殺害しました(紀元前696年―641年)。そのあと、幼い子のヨシヤが王となり、やがて、宗教改革を断行し、主を礼拝する国としました。この頃、預言者エレミヤが召命をうけたと考えられます。しかし、良い目的で始められたヨシア王による宗教改革も、時間の経過と共に、だんだん、外面的なものになってしまったようです。ヨシヤ王がエジプトのパロネコとの戦いで戦死したあと、ヨシヤの後継者エホアハズが王位につきましたが、エジプトはエホアハズを捕虜としてエジプトに連行し、これに代えて、兄のエホヤキムを南ユダの王としました。今度はバビロンが勢力を伸ばし、エホヤキムは王位から降ろされ、エホヤキンを王位につけます。しかし、100日もたたないうちに、バビロン王のネブカデネザルは、エホヤキンを王位から下ろし、ゼデキヤを王に付けました。後にゼデキヤ王はバビロンに反逆しました。それで、バビロンは、エルサレムと南ユダを完全に滅ぼし尽くしました。この間、預言者エレミヤは、外国の勢力に翻弄されて揺れ動く、南ユダの王や指導者たちに対して、一貫して、主に従うように宣べ伝え続けた預言者でした。
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