40章から終わりまでの部分は、エレミヤの晩年の出来事がいくつか記されています。40章1節には「侍従長ネブザルアダンがラマからエレミヤを釈放して後に、主からエレミヤにあったことばー彼がエレミヤを連れ出したとき、エレミヤはバビロンへ引いて行かれるエルサレムとユダの捕囚の民の中で、鎖につながれていた。」と記されています。ところが、主のことばが、そのあと、すぐには記されていないのです。そこで、最も理解しやすいのは、「主からエレミヤにあったみことば」とは、40章から45章全体に関する表題という解釈です。
さて、39章で、エレミヤはネブカデレザル王の侍従長であるネブザルアダンによって釈放されたはずです(39章11節―14節参照)。ところが、戦後処理のどさくさに紛れて、占領軍であるバビロン軍のものたちが、エレミヤを拘束して、バビロンへ引いて行かれる捕囚の民の一員として鎖につないでいたようです。しかし、侍従長ネブザルアダンが、その間違いに気づき、エレミヤの鎖を解かせ、再度、釈放させました。それから、エレミヤに対して、どこにでもエレミヤが希望するところに行って良いと話しました(2節-4節)。ところが、エレミヤが決めかねているのを見て、ネブザルアダンはエレミヤに対して、バビロンの王が南ユダの地を委ねたシャファンの子のアヒカムの子のゲダルヤのもとに帰り、この地に留まるように勧めました。そして、食料や贈り物を与えて、エレミヤを送り出しました(5節)。そこで、エレミヤはネブカデレザルが総督として任命したゲダルヤのところに行き、民たちと共に生活しました(6節)。ゲダルヤは自分の部下たちに、バビロンに仕えるように勧め、それが幸せの道であると言いました。そして、しばらくすると、ゲダルヤが総督として任命されたというニュースが、諸国にも伝わるようになり、モアブやアモンやエドムなどに逃避していたユダの民が、ゲダルヤのもとに続々と帰還してきました(7節―12節)。こうして、おそらく、4年くらいの間、平和が続いたようです。ところが、ゲダルヤのもとに、アモン人の王バアリスが陰謀を企てて、ネタヌヤの子のイシュマエルを送ってゲダルヤを暗殺しようという計画がある事が、カレアハの子のヨハナンや将校たちから上方が知らされました。ところが、ゲダルヤは、その情報を否定して、むしろ、カレアハの子のヨハナンに、イシュマエルについて、そんな偽りを言ってはならないと反発しました(13節―16節)。ここで、40章は終わります。(しかし、このあと、41章をみると、ゲダルヤは、イシュマエルによって、結局殺されることになります。そして、せっかくの平和も崩れ去るのです)。
さて、今日の個所では、エレミヤが、自由の身になるのですが、バビロンへ行くことを選ぶのか、ユダの地に留まることを選ぶのか、あるいは別の地を選択するのか、私たちには関心があるところです。エレミヤ自身は、ずっと長い間、南ユダの民に対して、主のみこころはバビロンに降伏することであり、バビロンに行くことが主に従うことであると語ってきました。しかし、どういうわけか、エレミヤは、今日の個所では、迷っているように見えます。そして、結局、南ユダに残ることを決断します。それは、ユダの地に残された貧しい者たち、あるいはゲダルヤと無力な少数のユダの民たちのために、自分は主の預言者として、主のみこころを伝える使命があると判断したからに違いありません。実際、このあと、42章1節―3節で、将校だけでなく、身分の低い者も高い者も、エレミヤのところにきて、主のみこころを告げるように求めています。しかし、エレミヤが民たちのために、あえて、ユダの地に残ることを決断したにもかかわらず、ユダの民たちは、最後の最後まで、エレミヤのことばを拒絶し、エレミヤを悲しませることになります。これは、もっとあとで、分ってくることですが、預言者エレミヤは、涙の預言者とか、悲しみの預言者として呼ばれる理由です。
清宣教師
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