哀歌の3章を解説するのは難しいです。想像もできない悲惨な敗北を体験した人たちと共に生きる哀歌の著者は、哀歌を詠むにしても、心の葛藤の中で平安を保つことは難しいようです。エルサレムの町の崩壊、神殿の焼失、民たちの苦難などを体験して主の激しい怒りのむちを受けて悩みに会った者(1節)と表現しています。神の裁きに対しては、自分たちの罪の当然の報いであることを知っています。確かに、主は主権をもってすべてをなさる権利があります。どれほど大きな罪を犯してしまったのか苦悩の中で思い知らされています。腎臓に矢を射こまれたような痛み(13節)、周囲の国々の嘲笑の的となっている屈辱(14節)、そしてすべての平安と望みは消えうせました(17節、18節)。繰り返し、悩みとさすらいの思い出がよみがえってきて、心が沈んでしまう日々(19節、20節)。だからこそ、「私は待ち望む」(21節)と心の切り替えをします。そして、主への賛美を捧げます。「私たちが滅びうせなかったのは、主の恵みによる。主のあわれみは尽きないからだ。それは朝ごとに新しい。『あなたの真実は力強い。主こそ、私の受ける分です。』と私のたましいは言う。それゆえ、私は主を待ち望む。」(22節ー24節)。そのあと、「主はいつくしみ深い」(25節)。「主の救いを黙って待つのは良い」(26節)。「主は人の子らを、ただ苦しめ悩まそうとは、思っておられない」(33節)。「私たちの道を尋ねて調べて、主のみもとに立ち返ろう」(40節)。「私たちの手をも心をも、天におられる神に向けて上げよう」(41節)。それは、深い絶望の穴からの主に向かう祈りです(55節)。そして、敵に対して報復して欲しいと願うのです(64節―66節)。
この箇所を読むとき、思うことがあります。。5年前の地震と津波により、福島第1原発の1号機から3号機までメルトダウンしました。その当時は正確な情報が知らされませんでしたが、その後、次々と明らかになった事がらを見る時に、人類史上初めての原発3基が同時期にメルトダウンした事故であり、主の憐みがなければ、東京の首都圏も仙台もみな壊滅的な被害をこうむる所でした。それを知って真っ先に思い出した聖句は、今日の哀歌の22節でした。「私たちが滅びうせなかったのは、主の恵みによる。」。
ところで、今日は、2016年3月11日です。2011年4月のイースターの日、教会では福島第1原発事故の収束のための24時間連鎖祈祷を正式に始めました。この5年の間に、地下水による汚染水の問題が発生し、その解決のために祈りました。また、被曝した方の健康のため、また、最初は4000人くらいの作業員の方が、今では7000人を超えることになっていますが、その作業員の健康のために、日々、お祈りしてきました。そして、祈り始めて、6か月もたたないうちに、原発の核燃料廃棄物、つまり、放射性廃棄物の保管は人間の手では管理できるものではないことが分ってきました。それで、日本の将来を考えるなら「原発ゼロ」以外にないという結論に導かれました。そして祈りの課題に「原発ゼロ」の実現のための祈りを加えました。それから、2年、3年、4年と時が流れました。その時の流れの中で、いつのまにか、原発の再稼働の動きが生れて、次々と再稼働が実行されるようになりました。原発ゼロの方向とは全く逆の方向への進展に、私自身の心に無力感が生れて祈りの情熱が薄れていくことを覚えるようになりました。どんどん力が弱まっていくことを感じました。そんなとき、行動を起こされるのが創造主である神様です。高浜原発3号機と4号機の運転停止が裁判所の仮処分として命じられました。主に感謝します。「「私たちが滅びうせなかったのは、主の恵みによる。」という思いを新たにして、感謝をもって、原発事故の収束と原発ゼロのために、心を込めて祈りたいと思います。
清宣教師
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