きょうの27章は、ツロに対する哀歌ですが、内容的には、ツロに対する非難のことばが見当たりません。前半はツロの繁栄と美しさについて記しており、後半はツロの滅亡の悲しみを歌った哀歌となっています。ツロは、3節に「海の出入り口」と記されているように、地中海沿岸の諸国との貿易の入り口に当たり、陸路の起点でもあり、東西の物産の通過点となっていました。また、33節には「おまえは多くの国々の民を満ちたらせ・・・」と記されているように、ツロは、自分中心のもうけ主義ではなく、商業の原点である、取引によって相互に富むという商業の正道を歩んでいたのです。つまり、この章はツロが、完全であったときの姿を描いていると思われます。そして、明日の28章で、ツロが自分の知恵と美によって高ぶる姿が描かれています。ツロは、「あなたが造られた日から、あなたに不正が見出されるまでは、完全だった。あなたの商いが繁盛すると、あなたのうちに暴虐が満ち、あなたは罪を犯した。」(28章15節、16節参照)と記されています。きょうの27章の前半では、ツロを船に例えてツロの美しさを描いています。
5節のセニルはヘルモン山、その樅(もみ)はエルサレムの神殿に使われるほどの高級材、レバノンの杉も有名な建材。6節のバシャンはヨルダン川の東岸の北部にあり、波にさらされる櫂(かい)には、バシャンの堅い樫の木材が使われていた。キティムはキプロス島のことであり、そこの檜(赤松)は造船のための建材。8節のシドンは、ツロの北にあった古い港町、アルワデは、さらに北の海沿いの島にあった都市であり、ツロもシドンもアルワデも昔から優秀な船員を生み出していた町である。9節のゲバルはシドンとアルワデの中間にある港町で船の修理に関しては右に出る者がないほど熟練した技術者たちがいた。10節のルデはアフリカ北東部の住民のこと、プテはナイル川デルタ地帯の西部にあたる地域と住民をさしている。11節のヘレクは小アジアのキリキヤ地方、ガマデはおそらくエジプトのガマド地方。ツロは、商取引を円滑にするため、海の安全を確保する必要があり、ペルシャ(当時は小国)、ルデ、プテ、アルワデ、ヘレク、ガマデ出身の傭兵を雇っていた。12節のタルシシュは、地中海の西の果て、現在のスペインの南端の町。13節のヤワンはギリシャのイオニア地方、トバルとメシェクは、共に小アジアに住んでいた民族。14節のベテ・トガルマはおそらくアルメニア。15節のデダン人はアラビヤ地方に住んでいた民族。16節のアラムは現在のシリヤ。17節のミニテはアモン人の町。18節のヘルボンはダマスコの北部にある町。19節のダンとヤワンは、北イスラエルのダンやギリシャとは別の地名で、アラビヤの鉱山の地名と考えられる。19節のウザルはイエメンの首都サナーの古い名。21節のアラビヤ人とケダルは、ともにアラビヤ半島の北部に住む遊牧民。22節のシェバとラマは、共にアラビヤ半島南部の都市。23節のハランはユーフラテス川上流の町。エデンもユーフラテス川上流のアラム人の町。このように、ツロは、多くの国々との交易によって大いに栄えた。ところが、26節―36節で、このツロという美しい船(例え)が突如として海の真ん中で東風により、沈没してしまうのである。明日の28章では、ツロの高ぶりと滅亡を記しています。その一部、ツロの王に関する記述(12節―19節)は、かつて天使長のひとりであり、ケルブと共に神に仕えていたルシファーが反逆して、堕落した天使たちの長(サタン)となったことを描写していると解釈する注解者もいます。明後日の29章から32章にかけてはエジプトに対する7つの預言が記されています。
清宣教師