8章は、ダニエルが見た第2の幻です。1節―8節は雄羊と雄ヤギの激闘です。1頭の雄羊の1本の角はメディアで、もう1本の長い角はペルシャの象徴です。雄ヤギはギリシャ帝国で、ギリシャがペルシャを攻撃し、これを征服します。ダニエルが見た幻の時から、約200年後の事でした。幻による預言は確かに成就したのです。著しく目立つ一本の角は、アレクサンドロス大王で、大きな角が折れた(8節)のはアレクサンドロス大王の死、著しく目立つ4本の角はアレクサンドロス大王の死後、4人の将軍によって分割統治されたことをあらわしています(8節)。4つの角のうちの1本の角から、また、小さな1本の角が芽をだしました(9節)。これはシリヤのセレウコス王朝から出てくるアンティオコス・エピファネスを指していると思われます。南はエジプト、東はペルシャ方面、麗しい国はイスラエルを指しています(9節)。アンティオコスはエジプトを破り、ユダに向かいました。そして、エルサレムに異教の祭壇を築き、一方では主への常供の捧げ物を禁じて神殿を冒涜しました(12節)。史実に拠れば、エルサレムの神殿に豚を犠牲としてささげ、イスラエルの神に代えてゼウスを礼拝させたと言われています。さて、一人の御使いから、神殿を冒涜する迫害はいつまでつつくのだろうか、という質問が出され、もうひとりの御使いが答えました。「2300の夕と朝が過ぎるまで。その時、聖所はその権利を取り戻す。」(14節)。2300の夕と朝についてはいくつかの解釈があります。直接的には、アンティオコス・エピファネスが紀元前171年にユダヤ人問題に干渉をはじめ、激しい苦難の始まりとなり、紀元前164年に死ぬまでの間を指していると思われます。15節~27節は、天使による幻の解き明かしが記されています。その説明にあたったのが天使ガブリエルでした。
9章では、ダニエルが預言者エレミヤの文書を読んで、バビロン捕囚の期間が70年であることを知りました。そこでダニエルは断食をし、イスラエルの民を代表して、悔い改めの祈りを捧げました。ダニエルは、神のみ言葉を求め、預言を通して神の計画を知り、その約束の計画を土台として執り成しの祈りを捧げました。これこそ、主なる神がエレミヤを通して主のご計画をあらかじめ示した理由の一つです。こうして、ダニエルは、神の計画を知り、その計画が成就するように、ひたすら主に祈ったのです。こうして、バビロン捕囚からの解放という扉が開かれたのです(1節―24節)。滝元望先生も、日本の太平洋戦争の開始から70年ということで、バビロン捕囚の70年という期間にならって、5年ほど前から、日本の国民を代表して、悔い改めと解放の祈りを捧げています。主のご計画が成就するには、この地において、神のご計画を知る者が執り成し祈る必要があります。そのために、主はあるひとを、執り成し手として選んでおられます。私たちにも聖書を通して神の約束のみことばがあたえられています。それを相続した人は、そのみことばの約束に基づいて、執り成しの祈りを始めます。それがみことばを与えられた人の責任であり、その祈りは国家をも動かすのです。
20節―27節の[70週の幻]がなされていますが、これも解釈はいくつかあります。「エルサレムを再建せよ」との命令がいつだされたか、その年代について、紀元前538年のエルサレム神殿の再建のクロスの勅令が出された年)とするか、紀元前445年に、エルサレム城壁の再建の許可がネヘミヤに与えられた年とするかです。そのほかの年代をあげるひともいます。「エルサレムを再建せよ」との勅令から、7週と62週のあとというと、69週後になります。69週は、483日となり、1日を1年とするという預言の解釈に基くと、483年になります。こうして、いくつかの解釈が試みられています。詳しくは参考書を見て下さい。ただ、この幻は、反キリストの出現とその裁きがなされる、世の終わりまで続いております。「荒らす忌むべき者」(27節)は、紀元後70年のローマ軍によるエルサレムの神殿の破壊を指していると思われますが、他方、世の終わりの再臨直前の状況をあらわしているとも思われます。
清宣教師
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