1節~5節には、旧約聖書の律法の書に記されている、幕屋の構造が示されています。出エジプト記で詳しく見てきた通りです。幕屋には、その前の方に、聖所と呼ばれる部分がありました。ここは祭司たちが奉仕することが許されていました。聖所は、左側に純金の燭台があり、聖所の中を明るく照らしていました。右側には、供えのパンの机がありました。聖所の奥には垂れ幕があり、その向こう側に至聖所を呼ばれる部分がありました。至聖所には、1年に一度、大祭司が入ることが許された場所でした。至聖所の中は、燭台のような照明器具はありませんでした。すべて、金で覆った板で囲まれており、垂れ幕も分厚いもので、至聖所の中は真っ暗であるはずでした。そこに契約の箱があり、箱の中には十戒の石の板、マナの入った金の壺、芽を出したアロンの杖が入っていました。契約の箱のふたの部分は、ふたつの栄光のケルビムの像が、向かい合っていました。じつは、その真ん中に、主の栄光(シェキーナあるいはシカイナ・グローリーと言われる)があり、至聖所の中は、人工的な照明器具はひとつもありませんでしたが、まばゆいばかりの主の栄光で満ちていたと考えられています。
6節~10節では、1年に1度、大祭司が至聖所に入る「贖いの日」のことが記されています。古い旧約時代の契約では、大祭司は、自分自身のため、次に、民のために、罪のいけにえを捧げます。そして、動物の犠牲の血を携えて至聖所に入ります。もし、血を携えていなければ、主の栄光の前に、即座にいのちを失ったと言われています。大祭司は、手にした血を、契約の箱のふたの上のケルビムが向き合う場所(贖罪所とよばれたり、贖罪蓋とよばれたりしています。ギリシャ語でヒラステリオン)に振りかけました。こうして、大祭司は1年に一度、聖所の清めをしました。実は、旧約時代になされてきた、これらのことは、やがてキリストがなされる型でした。そして、キリストはすでに、そのことを成就したのです(11節)。
旧約時代の幕屋や大祭司が示してきた型は、キリストの贖罪の働きの型でした。キリストは、この地上の人の手で造られた幕屋ではなく、天にある完全な幕屋を通り、やぎや子牛の血によってではなく、御子ご自身の血によって永遠の贖いを成し遂げられたのです(12節)。こうして、キリストは、新しい契約の仲介者となられました(15節)。さて、この契約は、昨日述べましたが、遺言といわれていますから、人が死んで初めて有効となります(17節)。ですから、死を意味する血によって、契約は成立しました。旧約時代には、動物の血(死)によって古い契約が確認されました。そして、旧約の本体であるキリストによる新しい契約においても、キリストご自身の血によって、この契約が永遠に有効であることが確立されたのです(23節~28節)。それはただ一度の贖いのわざでしたが、これで全人類の罪の贖罪が成就したのです。「贖い」という英語のことばは、atonementですが、これは、at-one-moment(ただ、一度かぎり)の合成語であると言われています。神の御子であるキリストは、ご自分のからだを裂かれ、血を流され、完全な贖いを成就して下さったのです。ですから、イエス・キリストは、十字架の最期の瞬間に、「完了した!」と叫ばれたのです。主の贖いの御業を賛美します。
清宣教師
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