さて、ヤコブが目をあげてみると、遠くから、エサウが400人の精鋭を引き連れてくるのが見えました。しかし、ヤコブは昨日までのヤコブとは違いました。もはや恐れはありませんでした。子供たちをわけて、女奴隷とその子たち、レアとその子たち、ラケルとその子ヨセフを最後にしました。しかし、今回は、ヤコブが彼らの先頭に立ちました。そして、兄に近づくまで、7回も地に伏してお辞儀をしました。エサウは、ヤコブを見ると、迎えに走って来て、ヤコブを抱き、首に抱き着いて口づけしました。二人は、道路の真ん中で抱き合って泣きだしました。この光景は、イエス様が語られた、放蕩息子を迎える父親の姿にそっくりですね。そして、ヤコブは、エサウに対して、妻や女奴隷やその子供たちの事を紹介しました。また、贈り物について、説明すると、エサウは、「自分には十分あるので、あなたのものはあなたの者としておきなさい」と言って、ヤコブの申し出を断りました。しかし、ヤコブが、しきりに勧めるので、エサウは、ヤコブからの贈り物を受け取ることにしました。こうして、兄弟の間には、赦しと愛とが回復しました。
さて、ここで、ひとつの問題が生じました。それは、エサウが、ヤコブと共に旅をすることを提案したためでした。エサウの一行は、精鋭部隊であり、屈強な壮年たちの集団でした。一方で、ヤコブの集団は、妻やこどもたち、それに家畜を連れての旅でした。そこで、ヤコブは、率直に、エサウが先に行って、自分たちはあとから行くことを提案しました。それで、エサウは、彼が連れている屈強な男たちを、護衛として、連れて行くように提案しました。それも、ヤコブは低調に断りました。ヤコブの心の中には、すでに、この後のなすべき行動が頭の中に入っていたのかも知れません。兄弟は和解しましたが、それぞれの道と選択しました。エサウは、セイルの自分たちの家へ帰って行きました。一方、ヤコブは、最初の神との約束の場所であるべテルを目指して、セイルとは反対方向のスコテ(小屋という意味)へ移りました。
何故、ヤコブは、兄エサウの後を追わなかったのでしょうか。おそらく、和解はしたとしても、二人の生き方には大きな隔たりがあることを知ったからであると思います。兄エサウは、「弟よ。私はたくさん、持っている」と言いましたが、じつは、最も大事な主への信仰をもたず、この世の持ち物で満ち足りていました。一方、弟ヤコブは、つねに、主に信頼する信仰をもち、行く先々で、祭壇を築き、すべての祝福と所有物は、自分の力ではなく、主の恵みによることを表しました。これが、エサウの人生とヤコブの人生の分岐点となるのでした。ヤコブは、エサウが進んだ道とは正反対の道を進みました。そして、そこで、自分のための家を建て、家畜のための小屋をつくりました。それから、スコテを旅たち、シェケムの町の手前の野に宿営し、その土地の一部を購入して天幕を張りました。そして、祭壇を築きました。その祭壇を、「イスラエルの神である神」(エル・エロヘ・イスラエル)と名づけました。ヤコブは、人生の最大の課題とも思われたエサウとの和解が成就したので、安心したのかも知れません。そこに落ち着いて、定住しようとしたようです。しかし、本来は、神との契約の場所であるべテルへ直行することが、神のみこころであったと思われます。シェケムに滞在したことが、このあと、大事件をもたらすこととなりました。
きょう、私たちも、主に信頼して、心の中の恐れを神様に言い表しましょう。そして、主への信頼を、祈りの祭壇を築くことで、表現しましょう。
清宣教師
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