いよいよ、ヨセフの信仰の証しが本格的に紹介されることになります。ヨセフは、兄弟たちの手によって隊商に売られて、エジプトに連れて行かれました。そこで、奴隷として売りに出されて、パロの廷臣で侍従長のポティファルという人に買い取られました。ヨセフは、故郷を離れ、父親からも離れて、自由を奪われて、主を礼拝することからも引き離されました。ヨセフは、孤独の中で生きなければなりませんでした。どんなに恐ろしかったことでしょう。
ところで、39章1節と2節で、わざわざポティファルという「エジプト人」と記されています。エジプト王の侍従長なので、エジプト人であることは当然のことです。わざわざ、記されているということは、当時、エジプトの王パロは、エジプト人の王ではなく、非エジプト系のヒクソス王朝(紀元前1700年~1500年)のセム系の王だったからではないかとも考えられます。また、「廷臣」と訳されている単語は、もともと、「宦官」を意味しています。おそらく、後で彼の妻が登場するので、「廷臣」と訳されたのだと思いますが、当時、宦官も妻をめとっていた例もあるので、文字とおり、宦官であったのかも知れません。それが、彼の妻が、ヨセフに言い寄ったひとつの遠因だったかも知れません。
さて、ヨセフは、ここでも、主人のポティファルに愛されました。そして、主人はヨセフに彼の家と全財産とを委ねました。それは、「主がヨセフと共におられたので」と記されている通りです。2節と3節で、2回繰り返されています。しかし、ポティファルの妻が、ヨセフが美男子であったこともあり、何度も言い寄りました。その都度、ヨセフは丁重に断りました。しかし、家の中にヨセフと二人だけになったとき、ポティファルの妻は「私と寝ておくれ」とヨセフの上着をつかんで言い寄りました。ヨセフは、上着を残して、逃げました。そのあとのことは、13節~20節に記されています。ヨセフは、主人によって捕えられて、王の囚人が監禁されている監獄に投獄されました。普通は、死刑にされるところです。ポティファルは、日ごろの妻の素行、男好き、悪賢さなどを思い起こし、一方、ヨセフの誠実さ、忠実な行動を思い起こして、死刑にするのを思いとどまったようです。それにしても、ヨセフにとって「上着」は、やっかいなことを引き起こすものでした。長服は、兄弟の妬みを引き起こし、エジプトに売られ、ここでは、ポティファルの妻によって冤罪の証拠とされ、投獄されたのですから。
サタンは巧妙です。ヨセフはエジプトに売り飛ばされましたが、ポティファルの信用をうけて祝福の中にあるとき、つまり、ホッと安心している時を狙って誘惑したのです。そして、美男子のヨセフに対して、主人の妻が目をつけるように仕向けました。主人の妻ですから、ヨセフにとって避けることが出来ない存在でした。しかも、その誘惑は執拗でした。それでも、ヨセフは、誘惑に勝利しました。それは、ヨセフが、主人に対する忠誠を貫き、しかも、いつも見えない神を自分の前において生活していたからでした。そして、それを貫きました。その結果、ヨセフは王の囚人たちが入れられる監獄に投獄されてしまいました。しかし、そこでも、「主がともにおられたので」(21節、23節)、ヨセフは、監獄の長に受け入れられ、一切の管理を委ねられる存在となりました。
ヨセフは、無実の罪にもかかわらず、兄弟たちの手によってエジプトに売られ、さらに、主人の手によって監獄に投獄されました。まさに、「義人の苦しみ」です。新約聖書の中に、次のみことばが記されています。「確かに、キリスト・イエスにあって敬虔に生きようと願う者はみな、迫害を受けます」(第2、テモテ3章12節参照)。「人がもし、不当な苦しみを受けながらも、神の御前における良心のゆえに、悲しみをこらえるなら、それは喜ばれることです」(第1ペテロ、2章19節参照)。まさに、ヨセフは、無実の罪にもかかわらず、祭司長や律法学者たちの妬みを買い、ローマの官憲によって投獄されたイエス様の型です。ヨセフを通して、やがて来たるべき救い主イエス様の御姿が描かれています。
今日、私たちも、主にあって、誠実さを貫きましょう。主が見ておられます。
清宣教師
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