モーセは、エジプトを遠く離れたミデヤンの野で、40年間、しゅうとイテロのために、羊を飼っていました。そして、いま、神の山ホレブのふもとに羊をつれてやってきました。ホレブ山とは、シナイ山のことです。すると、柴が燃えている光景を見ました。ところが、その柴はいつもとは違って燃え尽きないのです。それは主の使いが柴の中に炎として現れたからでした。しかし、モーセはそれとは知らずに、柴がどうしていつまでも燃え尽きないのか、好奇心から柴に近づいて行きました。
すると、突然、柴の中から神がモーセに呼びかけられました。「モーセ。モーセ」とモーセの名を呼んだので、モーセは、「はい。ここにあります」と答えました。神はさらに、この場所が聖なる場所であることを告げて、足のくつを脱ぐように命じられました。当時、聖所に入る時は、くつを脱ぐのが古代東方の習慣でした。モーセは、くつを脱いでひざまずいたことと思われます。そこで、「私は、あなたの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である」と告げられました。モーセは、神を仰ぎ見ることを恐れて、顔を隠し、ひれ伏しました。
ところで、主はご自分の臨在を、燃える柴の中に表されましたが、ある人は、燃えるということは試練を表すと考えています。そして、柴は燃えているのに、主の臨在の中では、柴は燃え尽きてなくなることがなかったことから、同様に、イスラエルの民は、激しい試練のなかにあっても、主がイスラエルの民の真ん中に臨在される限り、イスラエルの民が亡びることはないことを示していると考えます。
さて、主は続いて、モーセに語られました。主はエジプトにいるイスラエルの民の悩みを見、叫びを聞き、痛みを知っている、と言われました。さらに、神がこの地に下って来られたのは、イスラエルの民をエジプトの手から救い出し、乳と蜜の流れる約束の地へと上らせるためであると告げられました。そして、モーセに対して「今、行け。わたしはあなたをパロのもとに遣わそう。わたしの民イスラエル人をエジプトから連れ出せ。」と命じられました。
しかし、モーセはしり込みします。「私はいったい何者なのでしょう。パロのもとに行ってイスラエル人をエジプトから連れ出さなければならないとは」と答えました。かつて、40年前は、血気にはやって、自分の力で同胞を救おうとしてクーデターを起こしたモーセでしたが、そのときの失敗の経験は大きく心の中に残っていました。かつてはエジプトで最高の学問を身につけましたが、その後の40年間の荒野の生活で、すっかり、その知識も失せてしまいました。
神はモーセの心の状態を理解され、ご自分がどのようなお方であるかを示されました。第1に、「わたしはあなたと共にいる」と言われました。主はモーセと共にあると言われたのです。第2に、「わたしは遣わす神である」と言われました。つまり、神ご自身が「わたしがあなたを遣わすのだ」と言われたのです。そこで、モーセは神に質問しました。あなたの名は、何ですか、という質問でした。それに対して、神は「わたしはある」という者であると答えられました。この「わたしはある」という名前はとても重要な意味を持っております。誰にも依存しないで、みずから存在される神です。神学用語では「自存」self-existenceといいます。永遠より永遠に、他の何物にも依存することなく、存在されるお方です。それから、イスラエルの民に対しては「父祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」というように命じました。さらにエジプトの王に対しては「へブル人の神」である、というように指示しました。
神は、さらに、これからモーセがなすべき手順、さらに、その結果、起こるであろう事柄を、手短に説明されました(16節~22節)。モーセは、神のみことばを理解したと思われます。しかし、それはある意味、人間的な理解であり、実際に、それらの事柄が起こった時には、モーセは理解できなかったようです。私たちも神のみことばを理解したつもりになりますが、実際に、事が起こった時、疑いの渦の中に巻き込まれてしまうことがあります。しかし、神のみことばは真実です。ただ、信頼するのみです。
私たちの神は、私たちと共におられる神です。イエス様は言われました。「見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。」(マタイの福音書28章20節)。また、私たちの神は、遣わされる神です。父なる神様は、御子をこの世に遣わされました。また、私たちに対しても、イエス様は「あなた方は行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。」(マタイの福音書28章19節)と言われます。
きょう、仕事の手を、ふと休めたとき、「主は私と共におられます」、また、「私は主から遣わされた者です」と心の中で宣言してみましょう。
清宣教師
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