21章1節に「定め」と記されています。このあと、21章~23章において「社会生活に関する定め」が記されています。すでに、20章に「十戒」が記されていますが、ここでいう「定め」は、十戒の原則を実際の生活に適用するための細かい定めを意味しています。
最初に出てくるのが、奴隷に関する規定です。ある意味、イスラエルの民はエジプトにおいて奴隷でしたから、そのことを踏まえたうえで、この「定め」の最初に述べられているのかも知れません。ところで、奴隷というと、当時の他の国々では、奴隷の生殺与奪の権利は、すべて奴隷の主人が権利を持っていました。しかし、21章2節~11節の定めをみるとき、イスラエルの国では、人権が認められていました。安息日は仕事をしなくてよかったし、7年目には、自由の身として無償で去ることが出来ました。しかも、そのとき、主人はその人に何も持たせないで去らせてはならなかったのです(申命記15章13,14節参照)。イスラエル人でない奴隷の場合も、50年ごとに訪れるヨベルの年には、無償で、自由の身となることが出来ました。そのほか、女奴隷に関しても、その権利が記されています。奴隷が、家畜より劣るように見なされていた時代にあって、イスラエルの律法は、奴隷を解放する規定があり、種々の保証が与えられていたことは驚くべきことです。
奴隷の規定の中に、もしも、その奴隷が主人のもとから去ることを望まない場合は、祭司の前で、主人がその奴隷の耳たぶに、キリで穴をあけるという規定があります。それはイアリングの穴のようなものですね。それがしるしとなり、その奴隷は、その主人に、一生仕える者となったのです。じつは、救い主イエス様に関する預言的な詩篇のひとつ、詩篇40篇6節に「あなたは、いけにえや穀物のささげ者をお喜びにはなりませんでした。あなたは私の耳を開いて下さいました。」と記されています。ここで、「開く」ということばは、本来は「穴を掘る、穴をあける、刺し通す」という意味です。ここでは、比喩的な用法として、出エジプト記21章6節の決まりを引用しているようです。つまり、奴隷がその主人に対する愛のゆえに、その「愛のしるし」として、耳たぶに穴をあけて(耳を開いて)、主人に対して全き献身を表明したように、キリストも耳を開かれたのです。つまり、イエス様は、ご自分を最も低くされ、罪人の仲間となり、奴隷のように仕える者となられました。しかも、それは、イエス様ご自身のハッキリとした意志によるものでした。イエス様は、私たちのために自由の身となることを望まず、両手両足を釘づけにされることを選ばれました。刺し通される、つまり、出エジプト記21章6節で、耳たぶをキリで突き刺すという儀式に重なってくる出来事でした。ですから、イエス様は、ローマの最も残虐な苦痛をもたらす十字架の刑を、あえて受けられました。永遠に、私たちの救い主となるという、契約を結ぶためでした。
「目には目。歯には歯。手には手。・・・」(24節、25節)。ある意味、このことばは、正反対の意味でつかわれることが多いように思います。これは復讐を定めたものというよりも、復讐をしないように定めたものです。人は、右足を踏まれたら、相手の右足を踏むだけでは満足しません。1やられたら、2にして返さないと収まらないのが人の心です。あるいは、1やられたら10にして返さないと本当の満足は得られないのが人のこころです。人の復讐は、自分中心のもので、ほんの小さな出来事でも、自分が傷つけられたと思えば、その人を殺すことさえしかねないものです。
ですから、聖書では、復讐してはならないと言われています。「愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りにまかせなさい。それは、こう書いてあるからです。『復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる』」(ローマ人への手紙12初19節)。1を1、2を2、10を10というのは、正当な裁きです。しかし、当事者の復讐心はそれでおさまるものではありません。ですから、今日の個所では、「目には目。歯には歯。・・・」と記されており、倍返し、10倍返しのような、復讐を禁じているのです。
その他の規定に関しては省略しましたが、落ち着いて読んでみると、驚きます。お互いに争いにならないように、細かい配慮が行き届いていると感じませんでしたか?このように日常生活の中で起きるであろう紛争を解決する定めとして、役に立ったと思います。
さて、私たちは神のかたちに造られた存在です。イエス様のような心に造られているのです。きょう、些細なことで腹を立てたり、怒ったりすることがないように、気付いたときには、「わたしは神のかたちにつくられたのだ!!!」と宣言しましょう。
清宣教師
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