冒頭、「これは神の人モーセが、その死を前にして、イスラエル人を祝福した祝福のことばである。」と強調しています。文字通り、モーセの遺言です。モーセは死に際して、12部族をひとつひとつ、祝福してからこの地を去るのです。
①イスラエルの民全体に対する祝福(2節~5節)。②各部族に対する祝福(6節~25節)。③イスラエルの民全体に対する祝福(26節~29節)という、3つの部分からなっています。
①(2節~5節):「まことに国々の民を愛する方、あなたの御手のうちに、すべての聖徒たちがいる。彼らはあなたの足もとに集められ、あなたの御告げを受ける」と告げられています(3節)。これは新約聖書において成就する世界宣教の姿を表現しているようです。異邦人もユダヤ人も、キリストにあって、ひとつの民として集められます。主はアブラハムに対して、すでに、「地上のすべての民族は、あなたによって祝福される」と宣言しておられます。その宣言は、シナイ契約、そして、モアブの地での契約でも、生きているのです。そして、最終的に、キリストにおいて成就するのです。
②(6節~25節):各部族への祝福のことばです。「ルベンは生きて、死なないように。その人数は少なくても。」(6節)これは敵の攻撃により困難に直面するが、死に絶えることはなく、少数でも守られる、という祝福です。ユダについては、「彼は自分の手で戦っています。あなたが彼を、敵から助けてください。」(7節)。ユダ族は民たちの先頭にたって戦いました(民数記2章9節参照)。つまり、敵に囲まれながら、前進する役割です。主が敵から助け出してくださる、という保証のゆえに、彼らは先頭を進むことが出来ます。レビについては、自分の父と母、自分の兄弟、その子どもをさえ無視し、ただ、主の仰せに従って主の契約を守りました(9節)。つまり、主なる神を第1として献身する人たちでした。また、彼らは、イスラエルを代表して、主に仕える者たちでした。それゆえに、主が、その資産を祝福し、その手のわざに恵みを施されるのです。ベニヤミンについては、主に愛されている者として、主のまったき守りが約束されています。ヨセフについては、太陽がもたらす賜物、月が生み出す賜物、それにさまざまな賜物が約束されています。ゼブルンについては、外に出る賜物、イッサカルについては、天幕の中にいる賜物、ガドについては、大きくする賜物、ダンについては、獅子のような賜物、ナフタリについては、西と南を所有する賜物、アシェルについては、その兄弟たちに愛され、鉄壁の守りの中で、その力は生きるかぎり続くという祝福をいただきました。
③(26節~29節):もう一度、イスラエル民全体への祝福のことばとなっています。「エシュルンよ」神はあなたを助けるため天に乗り、威光のうちに雲に乗られる。エシュルンとはイスラエルのことを指しています。主はイスラエルを助けるお方である、と宣言しています。それで、イスラエルは安らかに住まい、穀物と新しいぶどう酒の収穫物を、自分たちのものとして喜ぶことが出来るのです。イスラエルは、なんと幸せな民なのでしょう。主に救われた民です。そして、主はイスラエルを助ける盾、勝利の剣となられるのです。
ところで、イスラエルの各部族の行く末を知っている読者の方々は、この祝福の通りになっていないことに疑問を感じるかもしれません。かつて、ヤコブも12部族を祝福しました(創世記49章参照)。今回はモーセが12部族を祝福しました。ヤコブにしても、モーセにしても、その祝福とは、神のビジョン、神の目から見た各部族のあるべき姿に基づいたものです。ですから、これがそのまま実現するかどうかは、各部族の受け止め方、各部族の信仰にかかっています。そして、残念ながら、この祝福を自分のものとした部族はないと言っても過言ではありません。部分的には、成就しましたが、最終的にはみな、背教の道をたどりました。私たちも、たくさんの祝福のことばをいただいております。それを真摯に受け取ることによってのみ、祝福が成就します。きょう、わたしたちも、神の祝福の言葉を、真摯に受け取りましょう。それが主のみこころだからです。主のみことばを、自分のものとして消化し、自分の一部となるようにしましょう。そのとき、みことばが成就します。
清宣教師
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