サウルは30歳で王となりました(1節)。当時、イスラエルの民の中で、剣や槍を持っている者はひとりもおらず、ただ、サウル王と王子のヨナタンだけが剣と槍をもっているのでした。つまり、ペリシテ人の支配下で、イスラエルの地では鍛冶屋の存在が許されておらず、鋤や鍬や斧や鎌などの金属製のものを修理するには、ペリシテの地にある鍛冶屋に料金を払って直してもらう以外に方法がありませんでした。つまり、ペリシテ人は、イスラエル人が自分たちで剣や槍を製造できないように支配していたのです。それでも、サウルは、イスラエルから3千人を選び、ペリシテに立ち向かうことにしたのです。2千人はサウル王のもとに、残りの1千人はヨナタン王子のもとに配置されました。ヨナタンがペリシテ人の隊長を打ち殺したことから、サウル王が国中に角笛を吹き鳴らし、全面戦争に突入しました。ペリシテ人は、戦車3万、騎兵6千、それに海辺の砂のように多い兵士たちが、やってきました。そして、ミクマスに陣を敷きました。
イスラエルの兵士たちは、前述のような状況で、武器も手にすることなく、立ち上がったので、圧倒的に不利な状況にありました。そして、文字通り、ゲリラ戦を仕掛けることもできず、ただただ、圧迫されて、洞穴や岩間、地下室、水ための中に隠れるだけで、反撃するチャンスもありませんでした。そのような状況が、ある程度、続いたので、民たちの間には不安が広がりました。このような状況では、民たちにとって、神の人であるサムエルが最後の頼みの綱でした。サウル王は、サムエルが来ると定めた日をひたすら待ちました。しかし、サムエルは約束された日時にあらわれなかったので、民たちはサウルのもとを離れて自分たちの家に帰ろうとしていました。そこで、サウル王は、サムエルの到着を待たずに、「思い切って」(12節)全焼のいけにえを捧げました。その直後に、サムエルが姿を現しました。サムエルは、サウル王が、自分の状況判断で、全焼のいけにえを捧げたことを知りました。そこで、思いがけないことが起こりました。サムエルは、サウル王に対して、主はサウル王を王位から退けられたこと、そして、ご自分の心にかなう人を君主として任命しておられると、宣言しました。そして、ベニヤミンのギブアの地に帰ってしまいました。ところで、サウル王が、自分のもとにいる民の数を調べると、およそ600人でした。ペリシテ人の陣地からは、3つの略奪隊が出てきて、3組に分かれて、イスラエルの地の略奪をほしいままにしました。サウル王とヨナタン王子のもとにいた民たちは、ただただ、ふるえながら、様子を見守るのみでした。
さて、サムエルは、サウル王に対して「あなたはなんということをしたのか」(11節)と問いました。サウルは正直に、ペリシテ人が集まり下ってこようとしている緊急事態の中で、自分にできることはなにかを考えて、民たちをひきとめるために、全焼のいけにえを捧げる以外にないと判断して、思い切ってそれを実行したことを報告しました。それに対して、サムエルは、「あなたは愚かなことをしたものだ。あなたの神、主が命じた命令を守らなかった」と糾弾しました。たった1回の失敗、それも、王としてあえて決断したことに対するサムエルの裁きは、サウル王にとって理解が出来ないことだったに違いありません。事の発端は、サムエルが約束の日時を守らなかったことです。それなのに、なぜ、サウルだけが、王の職務を解くという厳しい措置を告げられなければならなかったのでしょう。読者である私たちも、理解に苦しむ聖書箇所です。サウル王は、自分で決める前に、主の指示を仰ぐ必要がありました。それが、イスラエルの王としての守るべきことでした。それを怠ることは、主を無視することでした。イスラエルの王として、それは絶対に、避けなければならない事柄だったのです。この箇所を読んだだけでは、あまりにも、主の厳しい裁きだけが浮き彫りになりますが、15章のアマレクとの戦いに勝利したサウル王の態度を読むときに、すでに、13章の出来事の中に、サウル王の本質が表れていたと知ることが出来ます。それは、イスラエルの王としての資質に欠けていることの表れだったのです。
私たちも、日常生活の中で、まわりの状況に振り回されて、これしかないと、自分勝手に判断して行動してしまう、そして、いろいろ言い訳をしてしまうことがあります。しかし、そのような自分自身を許していると、いつのまにか、自分自身が王様となって、神様のみこころを、自己流に解釈したりして、神様のみこころを損なうことがあります。きょう、自分自身の心と行動に、注意しましょう。私たちはクリスチャンとして召されました。召しにふさわしく、謙虚になりましょう。
清宣教師
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