今日の個所は、サムエル記第1、30章の出来事に続く形を取っています。ダビデたちが、アマレクの略奪隊を追跡して、アマレクの略奪隊が奪った、子どもたち、家族、家財など、すべてのものを取り返し、ツィケラグに戻った三日後の出来事です。突然、サウルの陣営からひとりものがダビデのもとにきて、サウル王とヨナタンの死を報告しました。その情報の信ぴょう性をたずねると、その若者は、自分自身が、サウル王を殺したことを明らかにしました。その時の事情は、サウル王がひどいけいれんを起こしており、自分を殺してくれ、と頼まれたからだと、若者は説明しました。しかし、ダビデは、その若者に対して、「主に油注がれた方に、手を下して殺すのを恐れなかったとは、どうしたことか」と言って、その若者を処刑しました。アマレク人の在留異国人とはいえ、サウル王に頼まれたのであれば情状酌量の余地はあったのではないか、と考えさせられます。しかし、どのような事情があれ、主に油注がれた方に対して、手を下して殺すということは許されないというのがダビデの判断です。ですから、アマレク人の在留異国人ではなく、たといそれがイスラエル人であっても、同様に処刑されたことと思います。私たちは、その場に居合わせたわけではありませんが、この若者は、サウル王とヨナタンの死を、ダビデに取り入ろうとして、得意げに話したのかも知れません。ダビデにとって、その行動の土台は、主に油注がれた方に対して、絶対的な権威を認めていたからです。ですから、たといダビデの家来が勧めても、サウル王のいのちがダビデの手中に転がり込んできても、決して、ダビデは自分の手でサウル王のいのちを奪うことはしませんでした。主に油注がれた方に対して、人間がどうこうする権利はなく、主ご自身が事を決めて下さる、と固く信じていたからです。このあとも、ダビデの行動方針はぶれることがありませんでした。ダビデは、自分から王位を奪うのではなく、主にゆだねて、主の介入の時を忍耐を持って待ちました。
さて、ダビデも、その家来たちも、サウル王とヨナタンのために、また、主の民のために、悼み悲しみ、夕方まで断食をしました。そして、ダビデはサウルとヨナタンのために哀歌を作りました。哀歌とは死者を悼む歌です。哀歌のなかで、ダビデは、サウルの剣とヨナタンの弓が、イスラエルの民を何度も救ったことを讃えました。この哀歌全体を通して、ダビデは、サウル王とヨナタンへの愛と尊敬を表現しています。ダビデにとって、サウル王は、主に油注がれた、特別の存在であり、イスラエルのために特別の使命を与えられた存在でした。ダビデは、そのサウルが、自分を殺そうとする存在ではあっても、サウルが失敗して失脚することを願っていたのではなく、むしろ、サウルが回復して、正しい治世を行う主の器となることを願っていたのでした。そして、ヨナタンがダビデに対して尽くした真心について讃えています。ダビデにとって、サウルは自分の敵ではなく、イスラエル国家という共同体の仲間であったのです。私たちも、神の家族である教会の一員です。その中で、いろいろなトラブルもあり、人間関係の難しさも生じます。しかし、あくまでも、それは敵ではなく、家族、仲間の一員です。背後にある存在こそ、私たちの真の敵です。サタンと悪霊が、暗躍して、私たちの間にトラブルを生じ、誤解を生じるように働いています。ですから、私たちのなすべきことがエペソ人への手紙6章18節に、記されています。「すべての祈りと願いを持ちいて、どんなときにも御霊によって祈りなさい。そのためには絶えず目を覚ましていて、すべての聖徒のために、忍耐の限りを尽くし、また祈りなさい」。
きょう、わたしたちの教会の兄弟姉妹が、互いに誤解したり、仲間割れすることがないように、陰で暗躍するサタンの策略が打ち砕かれるように、ともに祈りましょう。それが、わたしたちに課せられた働きです。これを怠ると、教会が混乱の渦のなかに巻き込まれてしまいます。牧師先生、執事役員の方々の働きが祝福され、兄弟姉妹が一致して歩めるように、祈りをもって支援しましょう。
清宣教師
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