16章は、聖書の中で最も長い「たとえ話」です。題名は「不真実な女」です。ひとりの女性のライフヒストリーを語ることにより、イスラエル民族の生い立ちから、その行く末までを浮き彫りにしています。その女とは、イスラエルの民であり、「わたし」とは、主なる神のことです。話の途中から、「女」とは言わず、「あなた」と語りかけている。
さて、その女性は、エモリ人を父とし、ヘテ人を母として生まれた。エモリ人も、ヘテ人も、主が忌み嫌われる偶像の民でした。母の胎から生まれた時、その女の子は、へその緒を切ってくれるものも、消毒してくれるものも、いなかった。そして、野原に捨てられた。血まみれになっている赤子が泣き叫んでいた。そのとき、わたしは、哀れに思い、「生きよ」と声をかけ、繰り返し、「生きよ」と繰り返した。それだけでなく、その子を引き取り、養い、成熟した女性となるまで、育て上げた。でも、身寄りもなく、裸であった。それで、わたしは、衣の裾を拡げて覆った。それは、正式の結婚の契約であり、あなた(その女)は、わたしのものとなった。わたしは、あなたを水で洗い、油を塗って、最高の着物、最高の飾り物で飾ってあげた。そして、あなたは、ますます、美しく、ますます、栄えて、ついに、女王の位についた。わたしが、あなたを、私の贈り物で、完璧に飾ってあげたからであった。しかし、そうなると、あなたは、自分の名声、自分の美しさに目がくらみ、わたしを離れて、通りかかる人がいれば誰にでも、身をまかせて姦淫をするようになった。そして、自分の子を殺すようなことさえした。それでも、あなたは、かつて、自分が丸裸で血の中でもがいていた出生の時のことを思い出さなかった。それで、わたしは、あなたが目をさまして、わたしのもとに帰るように、あなたを養うことをやめた。しかし、あなたは、今度は、ペリシテ人、次はアッシリア人、さらにはバビロン人と、次から次へと、相手を変えた。もはや、遊女のような生活を得るための手段ではなく、自分から、代価を求めずに、ただ、姦淫を好む者となってしまった。そして、裸の恥をあらわし、自分の子をささげるようなことをした。だから、わたしは、あなたを罰することにした。彼らは、集団で、あなたを襲い、丸裸にし、石を投げ打ち殺し、剣で切倒すようになる。そうして、わたしは、あなたの淫行をやめさせる。あなたは自分が若かった時のことを思い出さず、これらのことで、わたしを怒らせた。あなたは、自分の夫とこどもたちを嫌った女である。あなたは妹のソドムや姉のサマリヤの不義を、口癖のようにしてバカにしていたが、あなたの行為は、ソドムやサマリヤの不義を軽くしてしまった。あなたの不義は、非常に重いからである。だから、わたしはあなたを裁く。このような例え話により、イスラエルの民が、ただ、主の憐みによって救われ、育てられ、成長し、繁栄したこと、つまり、ダビデやソロモン王の全盛時代のことを言い、そのあと、彼らはたかぶり、自分たちは神の民であるから、成長して当然、繁栄して当然と自分中心の存在となり、主から離れて、多くの神々、多くの偶像を拝み、不義の中に陥って行ったことを示している。そして、いま、その結果として、北イスラエルはアッシリア帝国により滅ぼされて捕囚の民となり、南ユダも、バビロン軍の前に、第1次捕囚となり、しかも主の預言者の声に従わず、バビロンに反逆して、完全に、滅ぼされようとしている。しかし、最後の部分、59節―63節において、主は、契約を破った女に対して、一方的に、その不義を赦し、若いときの結婚の契約に基づいて、とこしえの契約を結ぶと宣言している。それだけでなく、姉のサマリヤ、妹のゴモラも、契約には含まれていなかったが、主の恵みによって、赦し、回復すると宣言されている。あたかも、主イエス様が、ご自分を十字架につけた人たちを前に、十字架の苦しみの中で、一方的に彼らを愛し、赦し、「父よ。彼らをおゆるしください」と祈られた姿に似ている。そのとき、あなたは、わたしが主であることを知る。以上です。私も、若いとき、父を憎んでいた時は、自分の憎しみは、明確な理由があるので、絶対、悪くないと思っていました。しかし、イエス様が、十字架の上で、無実にもかかわらず、ご自分に唾をかけ、ムチ打ち、侮辱し、殺そうとしている者のために祈られている姿を見た時、自分の本性が分りました。神の御子イエス様は、完全に聖なる方であることを悟りました。その瞬間、自分がいかに汚れた罪人であるかが分りました。人は責められると、自分には正当な理由があると反論しますが、真実の神の愛に触れるとき、自分の真実の姿に気付くのですね。
清宣教師
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