ダニエルは21日間の祈りへの応答として、「真理の書」(10章21節)に記されていることを知らされました。その預言が、11章と12章に記されています。「いま、私は、あなたに真理を示す。見よ、なお3人の王がペルシャに起こり、第4の者は、ほかのだれよりも、はるかに富む者となる。・・・」と語られています(2節)。クロス王が死ぬと、その子のカンビュセス(紀元前529年―522年)が王となった。次にスメルディス(紀元前522年―521年)、次いで、ダリヨス・ヒュスタスペス(紀元前521年―485年)、そして、4番目がクセルクセス(別名、アハシュエロス)王であった(2節)。3節の「一人の勇敢な王」とはアレクサンドロス大王のことを指しています。アレクサンドロス大王が33歳の若さで病死してしまうと、大王の死後、息子が生れたが、権力闘争の結果、母子ともに殺されてしまい、4人の将軍が帝国を分割して、エジプトのプトレマイオス家、シリヤのセレウコス家、マケドニヤのアンティオコノス家、小アジアのフィレタエルス家の4つに別れてしまいました(4節)。5節~20節は、南の王と北の王との争いです。5節の「南の王」とは、エジプトのプトレマイオス1世です(紀元前323年―285年)。「その将軍のひとり」とは、セレウコスです。彼はプトレマイオス1世の士官でしたが、シリヤ王となり、アレクサンドロス大王の後継者のなかで最も大きな権力をもつようになります(5節)。最初エジプトの支配下に置かれていたイスラエルも後にはセレウコスが支配するようになり、かつてのアレクサンドロス大王の領土の約7割を支配するまでになります。何年かの後、エジプトとシリヤの争いに疲れた両国は、互いに同盟を結び、エジプトの王プトレマイオス2世は、娘ベルニケをアンティオコス2世に嫁がせました。アンティオコス2世にはすでに妻のラオディケと二人の王子がいましたが、この王子を王位につかせないことを条件にした政略結婚でした。しかし、2年後にプトレマイオス2世が死んだので、アンティオコス2世は再び、ラオディケを妻としました。ラオディケは夫を殺し、殺戮が続きました。「しかし、この女の根から一つの芽が起こって」(7節)と記されているように、ベルニケの弟プトレマイオス・ユーエルゲテースが父王プトレマイオスに代わって王となりました。彼はシリヤを攻撃して勝利し、ベルニケの恨みを晴らしました。彼はこの時、北の国シリヤから多くの財宝を持ち返りました(8節)。しかし、北の王アンティオコス2世の子のセレウコス・カリニコスが紀元前242年に南の国エジプトへの侵略を試みましたが、失敗して帰国しました。紀元前240年のことです(9節)。セレウコスの二人の息子であるセレウコス3世とアンティオコス大王が、大軍を率いて南のガザの城を攻めました(10節)。紀元前218年の頃でした。すると、エジプトの王プトレマイオス・フィロバトールが立ち上がり、シリヤ軍に応戦しました。シリヤ軍は大敗してその大軍はエジプト王の手に渡されました(11節)。エジプトのプトレマイオス王はシリヤ軍を捕虜として連れて行き、この勝利が彼を高慢にしました。再び、エジプトがイスラエルの地への支配権を得ました。彼が死に、息子のプトレマイオス5世が4歳で王位につくと北のシリヤの王アンティオコス3世がこれを好機ととらえて、再び、エジプトを攻撃しました。紀元前205年のことです(13節)。アンティオコス3世は、さらにマケドニヤのフィリッポス王と同盟を結び、エジプトからの独立を夢見るイスラエル人の一部を巻き込んで、エジプトを攻撃しました。しかし、この夢は失敗しました(14節)。一方、プトレマイオス5世は、エジプトの将軍スコパスによって大軍をもってシリヤと戦い、イスラエルの地の奪還をはかりましたが、シリヤ軍に敗れてシドンに逃れました。シリヤ軍は紀元前198年、シドンを陥落させました(15節)シリヤはさらにイスラエルの地を攻略しました(16節)。アンティオコス3世は、エジプトを自分の支配の中に完全に得ようとして、娘のクレオパトラをエジプト王プトレマイオス5世に嫁がせました。しかし、クレオパトラは父に背き、夫の味方になり、アンティオコス3世の政略は失敗しました(17節)。そこで、シリヤのアンティオコス3世は地中海の島々を占領しました(18節)。ローマは、「ひとりの首領」ルキウス・スキピオを立ち向かわせ、シリヤ軍を打ち破りました。アンティオコス3世はシリヤに帰りましたが、ローマから多額の賠償金を課せられ、国民の反感をかって殺されました(19節)。「彼に代わってひとりの人が起こる」とは、アンティオコス3世に代わったセレウコス4世(紀元前187年―175年)のことです。彼はローマに賠償を払わなければならず、財源となる税をとりたてるために、イスラエル(パレスチナ地方)に大臣を派遣しました。この大臣ヘリオドルスによって、セレウコス4世は暗殺されました(20節)。
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