ネブカデネザル王の治世の第2年(紀元前603年)のことです。ダニエルは16歳から18歳の間であったと考えられています。ネブカデネザル王は、いくつかの夢をみました。その頃、ネブカデネザル王は、将来のことを考えて、夜も良く眠れない状態でした。そして、おそらく、ネブカデネザル王は、重大な夢を見たことは覚えているのですが、夢の内容を思い出せなかったようです。それで、王は、バビロンの呪法師、呪文師、呪術者、カルデヤ人(占星術者)を呼び寄せて、夢の解き明かしをするように命じました。そこで、彼らは、王様に、「その夢をお話し下さい。そうすれば、私たちがその解き明かしをしましょう」と申し上げました。それに対して、王様は、その夢の内容と解き明かしを述べるように命じました。それで、彼らは、「夢の内容を知ることなど、それは人間には出来ないことであり、王様が言われることは無茶です、どんな偉大な王でもそのようなことを求めた王はいません。神以外に不可能です」と申し上げました。そうすると、王様は、怒り、おおいに、たけり狂い、「バビロンの知者をみな滅ぼせ」と、王の侍従長に命じました。そこで、王の全権を受けた侍従長は、ダニエルと3人の同僚を殺すためにダニエルの所にも来ました。そこで、ダニエルは、知恵と思慮をもって応対しました(14節)。その経緯を詳しく聞いた後で、王様のところに出向き、解き明かしをするためのしばらくの時間を求めました。それは許可され、ダニエルは、自分の家に帰り、同僚のハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤに事情を話して、祈ってもらうことにしました。その夜、ダニエルは、夜の幻のうちに、王様が見た夢の内容を知ることが出来ました。夢とは眠っている時みるものですが、幻とは、起きている時に見るものです。ですから、ハッキリ、記憶することが出来ます。翌朝、ダニエルは、王様の前で、夢の内容とその解き明かしをしました。それは、巨大な像でした。頭は純金、胸と両腕が銀、腹とももが青銅、脛が鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でした。ところが、人手によらず、大きな石が切り出され、その足を打ちました。すると、打たれた足だけでなく、その巨大な像の全体が砕けて、跡形もなくなり、その石が大きな山となって全土に満ちました。さて、その解き明かしですが、この夢は、これから後に起こる人類の歴史を示すものでした。純金の頭はバビロン帝国、胸と両腕がしめすのが、メド・ペルシャ帝国(メディアとペルシャのふたつの王国からなる)、つぎの、青銅の腹とももはギリシャ帝国です。鉄のすねはローマ帝国、両足が示すように、東ローマ帝国と西ローマ帝国に別れます。そして、足は一部が鉄、一部が粘土でした。強い部分と弱い部分が混在しています。ヨーロッパ諸国のことです。鉄と粘土は混じりません。しかし、43節によるように、王室同士の婚姻関係により結ばれます。でも、互いに団結することはありません。これは、ECのちのEUを指すと考えられています。弱い部分と強い部分が交じり合い、一つの国を形成しようとします。しかし、本当に団結することはないのです。そして、そのあと、人手に寄らずに切り出された石が、巨大な像(人類の歴史)に終止符を打ちます。その石は神の国のことです。再臨のキリストが、永遠の王国(神の国)を打ち立てるのです。これらの解き明かしを聞いた王様は、ダニエルをすべての知者たちを司る長官に任命しました。また、王様は、ダニエルの願いにより、3人の同僚たちをバビロン州の事務をつかさどらせました。バビロンのネブカデネザル王は、命令一つで、すべての知者を滅ぼすことが出来る絶大な権力をもっていました。しかし、自分の感情をコントロールできず、大いに怒り、大いにたけり狂い、八つ当たり的に、すべての知者を滅ぼせと命じました。そこには、恐れがあったようです。夜も眠れない不安があったようです。だからこそ、どうにも出来ない怒りが爆発したようです。一方、ダニエルは、自分たちを殺すために来た使者の前で、知恵と思慮をもって応対することができました(14節)。この対比が際立っています。揺るがない土台に堅く立つものは、動じません。冷静に、知恵と思慮をもって応対することが出来ます。時には上司の人が、大いに怒りたけり狂うということがあるかも知れません。自分の力を超えた問題に対する不安と恐れがあるからです。でも、私たちは、そのとき、祈ることが出来ます。「落ち着いて、主に信頼すれば、あなたがたは力を得る」(イザヤ書30章19節)。
清宣教師
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