さて、「使徒の働き」の全体を振り返って、いくつか補足させていただきます。著者ルカは、「拡がり」に関心をもっていたようです。全体のストーリーとしては、聖霊の力に力づけられ、命が変えられ、地域の共同体が生まれていく、この勝利と喜びに溢れて前進し続ける福音の拡大こそが、後に続く教会に対して神が望んでおられることである、と伝えたかったのではないかと思われます。また、この使徒の働きの中では、異邦人の宣教とそこにおける聖霊の役割を無視しては成り立ちません。「使徒の働き」という書名を「聖霊の働き」とすべきだという注解者もおられるほどです。ところで、「使徒の働き」の始めの1章3節で、イエス様が「神の国」のことを語り、実際に神の国の拡大の働きを担う役割を、使徒たちに託されたことが記されています。そして、「使徒の働き」の結びの28章31節で、パウロが大胆に「神の国」を宣べ伝えた、と結んでいます。私たち21世紀に生きるクリスチャンの役割もまた、福音宣教を通して、御国の拡大の役割を担っています。これは創世記から黙示録に至るまでの一貫した神のご計画です。生めよ、増えよ、地を満たせ、地を管理せよ、との命令です。これが新約においては「御国が来ますように」との主の祈りの要請となり、マタイの福音書28章19節の大宣教命令となり、ついには、新天新地の到来により、完全に成就するのです。

清宣教師