34章に記載されているシェケムの町におけるヤコブの息子たちによる殺害事件は、おそらく、ヤコブの人生で最大の危機ともいえる出来事であったと思われます。地元の住民であるカナン人やペリジ人たちに復讐されたなら、ヤコブの一族は皆殺しにされるところでした。しかし、主の憐みにより、神からの恐怖が町々に下り、カナン人やペリジ人たちは、恐れて、手を出しませんでした。こうして、神の介入により、助けられました。一方、恐れの中にあるヤコブに対して、主なる神が語って下さいました。いよいよ、人生の再出発の時が来たのです。ある意味、ヤコブは、自分が蒔いた種を刈り取ってきました。ラバンのもとでの生活は、結婚の喜びはありましたが、妻同士の反目、狡猾なラバンの仕打ちなど、苦しみも多いものでした。ヤコブが「自分が蒔いた種を刈り取ってきた」と書きましたが、それは自分の力で押しのけようとして、父や兄を欺いた悪事のためでした。しかし、悪いタネは、必ず刈り取る時が来ますので、早い時期に刈り取ることは祝福です。私も何度も、自分が蒔いた悪い種を刈り取りました。必ず刈り取らなければならないのだったら、早く、刈り取った方が祝福であることを学びました。なぜなら、それを刈り取ると、あとは、良いタネの刈取りをすることになるからです。ヤコブも、自分が蒔いた悪いタネを刈り取ったので、一段落しました。そして、いま、人生の再出発の時が来たのです。神の御計画が、いよいよ、スタートするのです。主なる神様は、「異国の神々を除き、身をきよめ、着物を着換えなさい」と命じられました。そして、ヤコブとその家族、しもべ、はしためは、それを実行しました。偶像を取り外して、ヤコブに渡しました。ヤコブは、それを樫の木の下に隠しました。祭壇を築き、再出発の誓いをしました。そして、神が再び現れて祝福されました(9節)。主は、また、言われました。「あなたの名はヤコブであるが、あなたの名は、もう、ヤコブと呼んではならない。あなたの名はイスラエルでなければならない。」それで、彼は自分の名をイスラエルと呼びました(10節)。しかし、このあとも、ヤコブという名前が登場します。興味深いことは、ヤコブとイスラエルという二つの名の使い分けです。大雑把にいえば、ヤコブという名前で呼ばれている時は、生まれつきの性質で生きていることを示唆し、イスラエルという名前で呼ばれている時は、神様の計画の中で生きていることを示唆しているように思えます。私たちも、イエス様を信じて、新生してクリスチャンとなり、神様のこどもとしてのいのちに生きるように計画されているのですが、生まれつきの肉の性質で生きているときが多いように思います。そのような視点から、今後のヤコブとイスラエルの二つの名前に関する記述を見ていくと、教えられるところがあると思います。ただ、不思議なことは、旧約聖書での主のお名前のひとつとして、普通、知られているのは、「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」であって、「アブラハムの神、イサクの神、イスラエルの神」ではないことです。そのことは、「私たちがまだ罪人であった時、キリストが私たちのために死んでくださったことにより神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます(ローマ人への手紙、5章8節)。」という御言葉を思い起こさせます。神に敵対している時にすでに、御子によって救われたのです(ローマ人への手紙、5章10節参照)。主はヤコブを愛し、導き、育ててくださいました。べテルを旅立ち、目的地に向かいますが、途中で、ヤコブは、最愛の妻、ラケルを失います。そして、やがて、父イサクが召されます。ところで、ラケルの死について、聖書はラケルの肉体から「たましいが離れる」こととみなしています。つまり、聖書が死の本質として記していることは、肉体と魂の分離です。イエス様も、地上生涯の最期に「父よ。わが霊を御手に委ねます。」と言われて息を引き取られました(ルカの福音書23章46節、ヨハネの福音書19章30節参照)。聖書によれば、死とは、肉体と魂の分離を意味しています。ところで、ヤコブは、新しくイスラエルとしての人生を再出発することになりました。「だれでも、キリストにあるならば、その人は新しく創造されたのです」。きょう、私たちも、キリストによって与えられた新しいいのちにあって生活しましょう。清宣教師
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