兄弟たちは、総理大臣の家での食事会を終えて、今回は、人質にされていたシメオンも、末の弟のベニヤミンも、兄弟一緒に父ヤコブのもとへ、帰ることになりました。豊富な食料の袋もありました。町を出て、故郷への道を急ごうとしたときの事でした。ヨセフの家の管理者が追いかけてきて、総理大臣の家にあった杯を盗んだという嫌疑をかけられたのです。それは、ヨセフによって仕組まれたテストでした。何事が起こったか分らない兄弟たちでした。兄弟たちは口をそろえて、「どうしてあなたのご主人の家から銀や金を盗んだりいたしましょう。しもべのうちだれからでも、それが見つかった者は殺してください。そして私たちもまた、ご主人の奴隷となりましょう」と言いました。そこで、総理大臣の家の管理者は、「それが見つかった者は、私の奴隷となり、他の者は無罪としよう」と言い渡しました。それで、兄弟たちは、年長の者から袋を地に下ろし、袋の口を開けました。まず、長男のルベンです。次に、次男のシメオンです。皆の心の中に不安がよぎったと思われます。シメオンだけが人質とされていたからです。しかし、何もありませんでした。次は、三男のレビ、そして、四男のユダ、五男のダン、・・・・次々に袋の口が開かれますが、どこにも杯はありません。あとは、もうひとり、ベニヤミンだけを残すことになりました。あるはずがない、兄弟たちは思いました。ところが、ベニヤミンの袋の口を開くと、なんと、銀の杯が現われたのです。よりによってなぜ、ベニヤミンなのか、兄弟たちは、まさかと絶句したに違いありません。そこで、管理者は彼らに引き返すように命じました。彼らは、ヨセフの家に入り、ヨセフの前で顔を地に伏せました。そこで、ヨセフは、わざと荒々しく、「あなたがたのしたこのしわざは、何だ私のような者はまじないをするということを知らなかったのか」とあえて言いました。おそらく、まじないという言葉で、ヨセフがエジプト人であると、兄弟たちが信じて疑わないようにとの考えから出たことばであったと思われます。そこで、ユダが答えました。「私たちはあなたさまに何を申せましょう。また何と言って弁解することが出来ましょう。神がしもべどもの咎をあばかれたのです。今このとおり、私たちも、そして盃を持っているのを見つかった者も、あなたさまの奴隷となりましょう」と申し上げました。ユダも兄弟たちも、今回のことは杯の盗みの嫌疑のためではなく、自分たちが20年前に弟ヨセフに対して無慈悲にも奴隷として売り飛ばした罪に対する、神からの審判であると受け留めたのです。だから、みなで奴隷となります、と申し上げたのです。そこで、いよいよ、ヨセフは兄弟たちに最後のテストを課しました。「杯を持っているのを見つかった者だけが、私の奴隷となればよい。他のものは安心して父のもとへ帰るがよい。」とヨセフは兄弟たちに語りました。昔の兄たちであったら、ベニヤミンを残して、自分たちだけが助かろうとして、その場を去ったに違いありません。しかし、今回は違いました。ユダが、詳しい事情を説明しました。今回は、ベニヤミンに対する父の愛情を思う時、ベニヤミンを残すことは絶対にできないこと、自分が、ベニヤミンの代わりとなる事、また、他の兄弟たちをも赦して、ベニヤミンと一緒に、故郷の父のもとへ返してほしいと嘆願しました。この弁明を聞いていたヨセフの心は、感動でいっぱいになったと思われます。

さて、今日の個所にも、私たちのために、身代わりとなられた神の御子イエス様の姿が表されています。私たちの身代わりにご自分の身を投げ出されたイエス様の事です。ユダがすべての兄弟たちの身代わりとして、いのちを差し出したように、イエス様も、私たちの身代わりとして、そのいのちを投げ出してくださいました。きょうも、神の御子の愛を覚えて、感謝の一日をおくりましょう。

清宣教師