きょうの個所は、有名な「十戒」が記されている個所です。原文では、「10のことば」という意味で、必ずしも「戒め」という意味のことばを用いていないそうです。この10のことばを大きく二つに分けて説明して下さったのがイエス様です。律法の専門家がイエス様に質問しました。「先生。律法の中で、たいせつな戒めはどれですか。」(マタイの福音書22章36節)。それに対して、イエス様は、次のように答えられました。「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』これがたいせつな第一の戒めです。『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』という第二の戒めも、それと同じようにたいせつです。律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです。」(マタイの福音書、22章37節~40節)。前半と後半に大別すると、十戒の前半は、主なる神に対するもの、後半は隣人に対するものということです。これが大事なポイントです。次に、蛇足になりますが、前半と後半は、どこでわけるのか、カトリックとプロテスタントでは異なります。プロテスタントでは、前半は4か条、後半が6か条と考えます。カトリックは前半が5か条、後半も5か条と考えます。2節~17節の中に、10のことばが記されていることは確かなのですが、この箇所を、どのように10か条に分けるのかという議論が、昔から、なされてきました。その分け方は、20通りも、30通りもあるようです。本題にかえりますが、十戒は、イエス様の解説によれば、「主なる神を愛せよ」と「隣人を愛せよ」のふたつに濃縮されます。出エジプト記20章の十戒は、「・・・してはならない」という禁止のことばが並んでいます。ヘブル語の原文では、最初に否定語がきます。ですから、非常に強い否定的な禁止の命令となっています。ところが、イエス様の説明によると、禁止や束縛の命令ではなく、「・・を愛せよ」という非常に積極的な勧めとなっています。創造主は、本来、人間を神のかたちに創造されました。神を愛し、神が造られた隣人、家族を愛することが初めからのみこころでした。ところが、サタンの誘惑により、神との間、隣人との間に、罪の故のくさびが撃ち込まれてしまいました。しかし、イエス様は十字架の贖いを通して、私たちの神の子としての身分を回復して下さいました。やはり、十戒の根底にあるのは、神の子どもとしての自由と解放の勧めですね。さて、民たちは、神がモーセと語られている様子を目撃して、遠く離れて立ち、モーセに懇願しました。「どうか、私たちに話してください。私たちは聞き従います。しかし、神が私たちにお話しにならないように。私たちが死ぬといけませんから。」(18節~19節参照)。ここでは、民たちはいかにも謙遜のよに見えますが、すぐあとに、モーセに逆らい、主なる神に逆らうようになります。真の謙遜とは、ほど遠いものでした。さて、このあと、神は改めて、金や銀の神々を造ったり、拝んだりしてはいけないと命じられました。偶像を造ったり拝んだりする人間の動機について、神様は、本質を見抜いておられます。「あなたがた自身のために」(4節、23節)と指摘されています。結局、偶像を造るのは、人間自身の意志や欲望を達成するためという動機からです。自分自身を隠して、偶像の意志であるかのように振舞い、結局、自分の意志や欲望を達成するのです。極端な場合は、ローマ皇帝など独裁者が用いる手段ですが、自分自身を神としてしまうのです。私たちも、偶像とは無縁のように思いますが、とくに、お金を偶像とすることには警戒しなければなりません。「お金さえあれば、これが出来る」、とか、「お金がないから、これが出来ない」とか、いろいろなものごとをお金に頼る姿勢は、本質的に、お金を神とするものです。聖書は、それをマモンの神と呼んでいます。「あなたがたは、神と富(マモン)に兼ね仕えることは出来ません」とイエス様が言われました。私たちのすべての必要を満たしてくださるのは創造主なる神様です。いつも、このことを覚えて生活したいと思います。20節~26節は、21章から始まる「定め」の序論的な部分に相当する個所と思われます。さて、「○○をしてはいけない」という旧約の律法をイエス様は「○○を愛しなさい」という新約の積極的な生き方の指針として解き明かされました。ですから、私たちも、十戒のことばを、イエス様に似た者となるという積極的な指針として理解したいと思います。清宣教師
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