1節~5節では、イスラエルの使命が記されています。イスラエルは神の所有の民として、主のおきてと定めとを学び、守り行うことでした。まず、その第一歩として、主が、ホレブにおいて、イスラエルの民と契約を結んだという事実を思い起こす必要があります(2節)。そして、その契約は、イスラエルの先祖たちとではなく、「きょう、ここに生きている私たちひとちひとりと、結ばれたのである」とモーセは、指摘しました。ホレブの山で十戒を与えられてから40年を経過しています。しかし、契約のことばは不変です。すべての世代に受け継がれ、継承されるべきものです。神の不変の契約の中に、すべての世代の人たちが継ぎ合わされるのです。しかし、その基本は、「きょう、ここに生きている私たちひとりひとり」です。すべての世代のひとりひとりが、契約の民として生きることを通して、神の民が形成されていくのです。
6節~21節では、出エジプト記20章1節~17節に記されていた、いわゆる「モーセの十戒」が再度、提示されています。ただし、第4番目の安息日に関するところが、出エジプト記20章とは異なることが分ります。なぜ、イスラエルの民たちが安息日を守らなければならないかの理由についての記述が異なっています。出エジプト記では、安息日を覚える理由は、創造主が6日のうちに、天と地と海とその中にいるすべての生き物を創造され、七日目に休まれたからである、と記されています。しかし、この申命記では、主が強い御手と伸べられた腕とをもってエジプトの奴隷の地から連れ出されたことを覚えるためである、と記されています。つまり、安息日は、創造の記念として、また、救出の記念としての意味があるということです。これは創造と救いのみわざは表裏一体のものであり、切り離すことが出来ないものであることを示しています。新約で言えば、週の初めの日である主日礼拝の理由が、キリストの十字架の贖いと復活(再創造)を覚えることと対応しているように思われます。創造と贖い、贖いと再創造、私たちにとって、これは切り離せないものです。創造は福音を支える土台です。そして、福音は再創造を支える土台です。
22節~33節は、イスラエルの民たちが、神と民との間に立つ仲保者として、モーセを求めたことが記されています(27節)。そして、主なる神は、民たちの要求をもっともである、と言われました(28節)。このように神と民との間に立つ仲保者が必要ですが、新約聖書においても、新しい契約において、神と人との間の完全な仲保者として、神の御子イエス・キリストが備えられたことを示しています。へブル人への手紙、8章6節~10節には、以下のように宣べられています。「しかし今、キリストはさらにすぐれた務めを得られました。それは彼が、さらにすぐれた約束に基づいて制定された、さらにすぐれた契約の仲介者であるからです。もしあの初めの契約が欠けのないものであったなら、後のものが必要になる余地はなかったでしょう。しかし、神は、それに欠けがあるとして、こう言われたのです。『主が、言われる。見よ。日が来る。わたしが、イスラエルの家やユダの家と新しい契約を結ぶ日が。それは、わたしが彼らの先祖たちの手を引いて、彼らをエジプトの地から導き出した日に彼らと結んだ契約のようなものではない。彼らがわたしの契約を守り通さないので、わたしも、彼らを顧みなかったと、主は言われる。それらの日の後、わたしが、イスラエルの家と結ぶ契約は、これであると、主が言われる。わたしは、わたしの律法を彼らの思いの中に入れ、彼らの心に書きつける。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる』」。
モーセはひとりの人間でした。しかし、キリストは神の御子であり、真の人となられた方です。そして、キリストは、神と人との間の完全な仲保者となってくださったのです。ですから、新しい契約は揺るぎのないものとなりました。私たちは、生まれつきの肉によって従うのではなく、完全に贖われた者として御霊によっていきるのです。御霊は、私たちをキリストの御姿に似た者へと、私たちを日々、変え続けて下さるのです。
清宣教師
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