サムエルは、主からの命令として、サウル王に対して、ひとつのことを指示しました。それは、アマレク人が、過去においてイスラエルの民に対してなした残虐な行為に対する報復でした。昔、イスラエルの民は、指導者モーセの導きの中、脱出しました。そのとき、イスラエルの民の中の弱い立場にある人たち、例えば、妊婦、幼児をつれた親、身障者、高齢者など、歩行が困難で、次第次第に、群の中で取り残される人たち、それらの無防備な人たちをアマレク人の軍勢が後ろから襲ったのです。そのような経緯があり、主はサウル王に対して、アマレク人を打ち、聖絶せよとの命令を下されたのでした。
そこで、サウルは、主の命令に従い、強敵アマレクに対して戦いを挑みました。歩兵20万、ユダの兵士が1万でした。サウルはこれら21万の軍勢を率いて、アマレクに対して大勝利をおさめました。しかし、と9節に記されています。「しかし、サウルと彼の民は、アガグと、それに、肥えた羊や牛の最も良いもの、子羊とすべての最も良いものを惜しみ、これらを聖絶することを好まず、ただ、つまらない、値打ちのないものだけを聖絶した」。そこで、主はサムエルに対して、「サウルを王に任じたことを悔いる」、と語られました。サムエルは、サウルの愚行に対して憤っただけでなく、サウルを任命された主に対して、何とかこの事態を打開して欲しいという、なんともやりきれない気持で、主に夜通し叫んだようです。一方では、サウルの不服従に対する義憤、他方では、そのサウルの罪を赦してほしいとの執り成しの入り混じった叫びであったと推測されます。
一方、サウルは、主の思いやサムエルの思いを察することはなく、大勝利に酔いしれて、カルメルに行き、自分の勝利(功績)をたたえる記念碑を立てて、意気揚々とギルガルに下ってきたのです。サムエルは、サウルに対して、主に対する不服従の罪を問いただしますが、サウルは、「私は主の御声に聞き従いました」(20節)の一点張りでした。サムエルはついに、「見よ。聞き従うことは、いけにえにまさる。・・・従わないことは偶像礼拝の罪だ。あなたが主のことばを退けたので、主もあなたを王位から退けられた」と厳しく糾弾し、主のみこころを宣言しました。そこで初めてサウル王は、サムエルに「私は罪を犯しました」と告白しましたが、どうやら、それはなんとか、この事態を変えたいということであって、心の底からの悔い改めではなかったようです。サウルは面目を立てて欲しいとサムエルに願いました。そして、サムエルはそのことを聞き入れました。しかし、そのあと、サムエルは自分の家へ帰り、死ぬまでサウル王には会わなかったようです。ただし、サムエルは、サウルのことを悲しみ、自分の祈りの中でサウルのために祈り続けたようです。
今日の個所から示されることは、信仰者にとって、最も危険な瞬間は、失敗のあとではなく、勝利のあと、しかも、大勝利のあとに訪れることを示しています。サウル王は、大勝利によって、自分のやり方に自信をもつようになり、サムエルに間違いを指摘されても、なかなか、率直に認めることをせず、いかにも正当と思われる理屈をつけて、自分の判断を正当化しました。そして、最後に、王位から退けるという主の宣告を聞いて、コロッと自分の立場を変えました。しかし、時すでに遅しでした。
主よ。私たちが成功をおさめたとき、自分の力、自分の能力によって、これを成し遂げたという誘惑から救い出してください。私たちの自我が、私たちを間違った道へと追い込むことから救って下さい。私たちを試みにあわせないで、悪からお救い下さい。
清宣教師
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