ペリシテ人とイスラエルとの戦いが始まろうとしていました。ダビデの一行は、偽りの忠誠を見破られることなく、アキシュに上手に取り入って、アキシュ王の護衛として任命されました。一方、イスラエルでは、サウル王は、全イスラエルを招集して、ペリシテ人との戦いに備えてギルボアに陣を敷きました。サウル王の心は、今回の戦いではなぜか、恐れによって支配されていました。ペリシテ人の陣営をみたことが原因のようです(5節)。かつては、サウロ王は、ペリシテ人の陣営を見ても、ひるむことなく、主のみこころを確信して勇猛果敢に攻め入ったものでした。しかし、今回は、恐れに支配され、その心はひどくわなないていたようです。そこで、サウル王は、主の祭司や預言者により頼みましたが、主からの答えをいただくことが出来ませんでした。それで、ついに、禁断の手である霊媒に頼る方法を選択してしまいました。
そのころ、サウル王はイスラエルの領内では、主の律法に従い、あらゆる占いや口寄せや霊媒を禁じており、厳罰に処していました。しかし、そのような状況の中でも、ひとりの霊媒師の女が残されていました。そこで、サウル王は、自分の身を変装して、霊媒師のところを訪ねました。しかし、その変装も、結局、霊媒師に見抜かれてしまいます。霊媒は悪霊との交信ですから、律法の中で固く禁止されていたことでした。しかし、サウル王は、誰にもすがることが出来ないので、霊媒師に預言者サムエルを呼び出したもらいました。そこで、預言者サムエルが霊媒師のまえに幻を通して現われました。そして、サムエルは、サウル王に対して、主はサウル王の王位を剥ぎ取り、ダビデに与えられること、また、イスラエルはペリシテ人との戦いで敗れること、そして、明日、サウル王と息子たちが戦死するであろうことを告げました。すると、サウル王はその場で倒れて、体が硬直して棒のようになりました。一昼夜、サウル王はなんの食事もせず、体力は尽きていたからでした。霊媒師とお付の家来たちの必死の説得で、サウル王は食事をして、イスラエルの陣地に帰って行きました。(註:この霊媒師によるサムエルの幻の出現は、悪霊の働きによるものか、あるいは、あえて主がそのような手段をもってサウルに語られたのか、意見が分かれるところです)。
昨日の27章では、ダビデが「ペリシテ人の地にのがれるよりほかに道はない」と自分で判断して、敵地に逃れ、偽りをもって、敵に助けてもらいました。しかし、その代償は大きく、決してダビデの益にはなりませんでした。今日の28章では、サウル王は「霊媒する女を捜して来い」という無謀な決断をしました。そして、自分の身分を偽って敵に助けを求めました。しかし、そこで得たことは、イスラエルの敗北と、サウル王と息子たちの戦死を告げる宣告でした。敵を欺いて、利益を得ようとすることは邪道です。しかし、ダビデも、サウルも、厳しい状況の中で、それしかない、という判断をしました。
今日の個所から教えられることは、イザヤ書30章15節に記されています。「立ち返って静かにすれば、あなたがたは救われ、落ち着いて、信頼すれば、あなたがたは力を得る」と約束されています。そして、そのあとに、「しかし、あなたがたは、これを望まなかった。・・・」と記しています。つまり、多くの人は、主の御手にではなく、目に見える戦力や自分自身の状況判断の方を選んでしまう傾向があるということです。サムエル記第1の27章も、28章も、反面教師としての役割を果たしています。どんなに窮地に陥っても、主に信頼するように教えています。自分自身の状況判断で、策略を練るのではなく、あくまでも主に拠り頼むことを勧めています。
清宣教師