今日の個所では、城壁が再建されて城門の扉が取り付けられて、門衛や歌うたいとレビ人が任命されました(1節)。さらに、エルサレムを治める者として、兄弟のハナニと城のつかさハナヌヤが任命されました。この場合のエルサレムを治めるとは、政治的な責任者ではなく、警備上の責任者であると考えられています。こうして、新しい日常の生活が始まりました。ネヘミヤは、敵の侵入や潜入に対して備えるため、門の開閉の時刻について指示を与えています。この町は広々として、そのうちの住民も少なかったからでした(3節)。具体的には、南北1キロメートル、東西500メートルくらいでした。その中に住む住民が非常に少なかったことを強調しているようです。当時、ユダ州全体の人口は10万人に足りない程度であり、その一部がエルサレムに住んでいたようです。ネヘミヤは、エルサレムを中心として新しい国造りのための計画を立てようとしていました。その時、主なる神は、最初にエルサレムに帰還した人たちの系図(名簿)を発見させてくださいました。それによってネヘミヤは、それぞれの人たちを主の御計画に基づき、適切に配置することが出来ました(6節~71節)。こうして、神殿の建設に次いで、エルサレムの城壁の修復も完成しました。これから、イスラエルの民は、神の律法を基礎にして、新しい信仰の共同体の形成へと出発するのです(7章72節後半~8章3節)。
古代の中国の問答の中に「新しく城を築くのと、その城を守り続けるのでは、どちらが難しいか」という問いかけがあり、後者の「城を守り続ける方が難しい」という答えがあります。これまで見てきましたように、ネヘミヤは、とてつもない困難の中で城を築きました。しかし、その城を守り続けるのはもっと困難なことです。これまではネヘミヤが、1章1節から「私」として登場してきましたが、それは7章5節までのことです。8章1節から、学者エズラにバトンタッチされます。つまり、13章3節までは、エズラの働きが中心となります。そして、再び、ネヘミヤが中心的な働きを担うのは、13章4節からになります。主なる神は、城を修復するのにネヘミヤを用い、その城を維持するのに、学者エズラを用いました。学者エズラは、イスラエルの民たちに律法を教え、さらに、民たちに再献身を求めていきます。このように、主の働きは、一人の人により完成するのではなく、鎖の輪のように、リーダーを立ち上げ、適材適所、多くの人たちの働きによって成長するのです。「キリストによって、からだ全体は、一つ一つの部分がその力量にふさわしく働く力により、また、備えられたあらゆる結び目によって、しっかりと組み合わされ、結び合わされ、成長して、愛のうちに建てられるのです。」(エペソ人への手紙、4章16節)。
清宣教師