王妃エステルの心は定まりました。死をも決意して、王室の正面にある王宮の内庭に立ちました。王の許可なしに内庭に入る者は即、死刑です。ただ、王の好意を受けた場合だけは例外でした。王は、手に持っていた笏を王妃エステルに伸ばし、エステルは、その笏の先に触りました。王の許可が出たということを意味しています。王は、死をも覚悟しての面会を求める王妃の姿に、ただならぬ雰囲気を感じたに違いありません。しかし、王妃は、穏やかに、おそらく、微笑みをもって、王とハマンを宴会に招待しました。王は、それを受け入れて、ハマンを連れて、王妃の宴会に出ました。酒宴の席上、王は、王妃になんでも願いがあるなら自分にいうように、その願いがなんであれ、かなえてあげよう、と言いました。しかし、王妃は、まだ、神のご計画の時は来ていない、と判断しました。そして、もう一度、明日、ハマンと一緒に宴会に来ていただきたいと、王を招待しました。そこで、王もハマンも帰って行きました。ハマンは、王妃から、王とふたりだけで招待されたことで、興奮しており、帰宅するや家族たちを集めて、その日の事を語りました。そして、モルデカイの無礼な態度にもふれました。そこで、その話を聞いていた妻や取り巻き連中は、高さ50キュビト(約22メートル)の柱を立て、明日の朝、王に申し出て、モルデカイをそれにかけることを提案しました。ハマンは、その提案をすっかり気に入り、その日のうちに、50キュビトの柱を立てさせました。(註:22mの高さと言われても分りにくいですが、電柱の高さは、通常、11m~16mです。道路にある電柱の1.5倍から2倍の高さです。王宮からでも見える高さと思われます)。
今日の個所では、王妃エステルの思慮深さが浮き彫りにされています。例えば、第1に、王と食事をするという場を設定したこと。第2に、王だけでなく、敵であるハマンをも招待したこと。第3に、招待の目的は明らかにしないまま、次の日の宴会への出席の回答を得たことなどです。エステルはまだ、主の明確な導きをつかむことができませんでした。それで、もう一日、待つことにしました。結果的に敵であるハマンは油断し、王は考える機会を与えられました。私たちも、なすべきことは知っていても、その時を知らないなら、もう一日、待つことも必要です。
清宣教師