パウロは、勇気を失うことなく、宣教の務めに励んでいます。何故なら、パウロは、「新しい契約」の素晴らしさを知っており、自分の務めとは、「御霊の務め」(3章8節)であり、「義とする務め」(3章9節)であることを知っているからです。しかし、福音を伝えたからと言って必ず、宣教の実をむすべるかというと、必ずしもそうではありません。何故なら、この世の神であるサタンが、不信者の思いを惑わし、福音の光を輝かせないように邪魔をしているからです。しかし、全能の神は、サタンの妨害のもとにある者たちの心の闇を照らし、神の栄光を知る知識を輝かせてくださるお方です。 「光が、やみの中から輝き出よ」と言われた神が、御霊により、キリストの御顔にある神の栄光を知る知識を輝かせてくださるからです。私たちは土の器にすぎませんが、この土の器の中に、「宝」をもっているのです。「キリストの御顔にある神の栄光を知る知識」を持っているのです。つまり、「福音、新しい契約」をもっているのです。私たちは、この宝を、土の器の中に入れているのです。 これが真の宝であることは、それをもつ土の器である者たちが、数々の迫害と試練の中にあっても、窮することなく、途方にくれることなく、行きづまることがないことから明らかです。世界中の歴史を通じて、また、日本の歴史を通じて、クリスチャンたちは迫害のなかで、この福音を保ち続けました。何故なら、彼らの心には主イエス・キリストの地上での生涯、とくに十字架に至るまでの苦難と辱めを受けられたお姿を見ていたからです。また、その苦難に勝利して復活の栄光にあずかったお姿を見ていたからに違いありません。パウロ自身は、「いつでもイエスの死をこの身に帯びています」と告白しています。それだけでなく、この永遠のいのちの祝福は、「あなたがたのうちに働くのです」と語り、コリントの信者たちにも与えられること、そして、福音宣教の働きを通して、周りの人たちにも及ぶことを改めて知らせています。そして、詩篇116篇10節から、「私は信じた。それゆえに語った」という聖句を引用しています。これはダビデのことばです。実際に、詩篇116篇10節を見ると、「『私は大いに悩んだ』と言った時も、私は信じた。」と記されています。引用のことばが違うのは、パウロは70人訳聖書(ギリシャ語訳)から引用しているからです。ダビデが言ったことは、「自分は大きな苦しみと悲しみの中に置かれているけれども、なお、神に対する信頼を失わない」、ということを表現してるものです。つまり、勇者ダビデも苦難のなかで、主に信頼したように、パウロも同じ信仰に立って、主を信じ、大胆に福音を語るのだ、と言っているのです。同じ詩篇116篇の3節では、「死の綱が私を取り巻き、よみの恐怖が私を襲い、私は苦しみと悲しみの中にあった。」とダビデはしるしています。それでもダビデは主に信頼しました。パウロも、この手紙の1章9節で、「ほんとうに、自分の心の中で死を覚悟しました」と述べています。実際に死に直面するような状況の中で、私たちには復活の希望がある、と述べています。主イエスをよみがえらせてくださった方は、私たちをもイエスと共によみがえらせ、一緒に父なる神の御前に立たせてくださるのです。16節~18節では、いくつかの対比によって真理を明らかにしようとしています。まず、「外なる人」と「内なる人」との対比です。つまり、肉体(古い人間性)は衰えていきますが、キリストを信じて新しく生まれ変わった、内なる新しいいのち(人格)は、日々、新たにされて、霊的に成長していくという対比です。ここでは、「衰える」と「新しくされる」という対比も含まれています。次に、「今の時の軽い艱難」と「重い永遠の栄光」という対比です。パウロが体験している艱難は、決して軽いものではありませんでした。しかし、やがてあずかる永遠の栄光の重さに比べたら、なんと軽い艱難であろう、という意味です。次に、「見えるもの」と「見えないもの」の対比です。見えるものはやがて朽ちていきますが、霊的な永遠の御国に属するものは、朽ちることがないのです。いま、私たちの周りを取り巻く情報はほとんどが目に見えるものです。例えばテレビの番組のグルメ、ファッション、住まい、車、家具、電気製品などが私たちの心を占拠しようとしています。あるいは、健康、美容、スポーツなども、目に見えるものです。とても魅力的なものとして、わたしたちの心を占拠しようとしています。でもよく考えてみれば、一時的なものです。天の御国に属するものこそ、例えば「愛、喜び、平安、希望、信仰、・・・」といったものは永遠です。私たちの目指すものは、内なる人の成長です!
主の御霊がおられるところには自由があります!
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