24章の1節では、バビロンの王ネブカデレザルが、ユダの王エコヌヤ(別名、エホヤキン)と、ユダの指導者や技術者たちなど、南ユダ王国にとってかけがえのない人たちがバビロンに捕囚として連れ去られた事件が記載されています。これは紀元前597年のエホヤキンの捕囚として知られています。余談ですが、エゼキエルは、この時の捕囚でバビロンへ連れ去られたのであろうと思われます。その後、エゼキエルは、バビロンの地で主の預言者として召されていくのです。
さて、エレミヤは、幻を見せられます。それは主の前に、ふたつの籠があるものでした。ひとつは良いイチジクで、もうひとつはとても食べられそうもない悪いイチジクでした。その良いイチジクというのは、なんとバビロンに捕囚となった南ユダの民のことであり、悪いイチジクとは、聖都エルサレムに残り、エルサレムは滅びないと信じていたものたちでした。どうしてでしょうか。物事の表面だけを見るなら、聖都エルサレムに残り、主の宮に礼拝し、主は自分たち約束の民(選民)を必ず守られると信じていた人たちが、なぜ、主の御前で、悪いイチジクなのでしょうか。それは、目に見える表面的なことではなく、内面における真実が問われているからです。
主のみこころはたびたび、主の預言者たちを通して語られました。その代表的な預言者がエレミヤでした。南ユダの偶像礼拝の罪は、最悪のマナセ王の時代以来、時には小規模な宗教改革がなされましたが、大きな流れとしては、指導者だけでなく、民衆全体を巻き込んでの偶像礼拝でした。それは、自分たちの繁栄を求め、不義と不正により、富を増し加える生き方でした。それに対して、主はバビロンを用いて南ユダの民を罰すると宣言されました。また、主のみこころを受け入れて、バビロンに下るなら、いのちを与えると約束されました。そして、このバビロン捕囚は、南ユダの民を偶像礼拝から完全に清めて、主に立ち返らせて、もう一度、主の約束の地に連れ戻すという計画でした。この主の御計画を受け入れる者たちこそ、良いイチジクの実なのです。
一方、あくまでもエルサレムにとどまり、南ユダの不滅を信じる者たちは、バビロンに従うふりをしていますが、本心ではバビロンに反逆するものでした。それは、主が南ユダを清めるために立てた器であるバビロンに反逆することであり、それは主に対する反逆となるのです。もはや、主に背を向けて利得をむさぼり、単に、自分たちの安全神話を裏付けるための神殿礼拝は、主に対する反逆のしるしでした。偽預言者たちは、南ユダは約束の民であり不滅であり、エルサレムは神の神殿がある聖都であり、バビロンはすぐにでも撤退するという、偽りの約束のことばを語りました。祭司も、預言者も、王たちもみな、偽りの安全神話にしがみつき、それを脅かす者たちを国家に対する反逆行為として、迫害し、処刑することさえしたのです。考えてみれば、祭司も預言者も王も、それぞれ、主の油注ぎによって任命される人たちでした。しかし、彼らはみな、偽物であったのです。(だからこそ、真の祭司であり、預言者であり、王である油注がれた者メシヤの到来が必要だったのです)。
主は憐み深いお方なので、このバビロン捕囚と言う徹底した裁きをもって、南ユダの民をきよめようとされたのです。後日談ですが、事実、このバビロン捕囚の経験をした南ユダの民たちは、それ以後、ふたたび、偶像礼拝に陥ることがなかったと言われています。
ルターの宗教改革以後、個人的な信仰による義認の教理が再認識されて、私たちはその流れの中にあります。しかし、それが内実の伴わない安全神話のようなものとなっていないかどうか、点検してみる必要があります。
清宣教師
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