前にも、お伝えしましたが、エレミヤ書を読むときに気を付けるべきことのひとつは、エレミヤ書の内容は時系列では記されていないことです。例えば今日の26章の出来事も、1節に記されていますが、南ユダの王エホヤキムの治世の始めの出来事です。今まで述べてきた25章までの出来事よりも、さかのぼっての記述と言うことができます。また、この26章から45章までは、エレミヤのことが、3人称で表現されているので、おそらく、エレミヤの書記的な役割を果たしたバルクによって収集され、記述されたのではないかと考えられています。
内容的には、1節―6節までが、エレミヤがエルサレムの神殿の入り口に立って、主の神殿に礼拝に来るすべての民に対して語った預言です。それは偶像礼拝をやめて、主の契約に従うように、悔い改め(方向転換)を迫るものでした。もしも、この預言に従わなければ、この神殿も、エルサレムの町も滅びるという警告でした。
これを聴いた祭司と預言者(宗教を担当)とこの預言を聞いた民たちはみな、こぞって、エレミヤを捕えて、死刑にしようとしました(7節―9節)。
そこで、ユダの首長たち(行政を担当)が「新しい門」の入り口に座りました。門の入り口に座るとは、公式の裁判の席についたことを意味しています(10節)。こうして、エレミヤを訴える宗教関係者が、エレミヤに対して死刑を求刑しました(11節)。そのあと、エレミヤが弁明の機会を与えられました(12節―15節)。エレミヤの弁明は、自分のいのちをかけて、主のことばを語る預言者にふさわしい態度でした。その態度に、ユダの首長たちは、その真実に、心を打たれました。そこで、首長たちは、判決を言い渡しました。それは「この人は死刑にあたらない。私たちの神、主の名によって、彼は私たちに語ったのだから」というものでした(16節)。それから長老たちが立ち上がって、民衆に話しかけました(17節―19節)。また、エレミヤと同じように、エルサレムと南ユダの滅亡を預言していたウリヤという人がいました。この人の場合は、エジプトに逃れましたが、追っ手を差し向けられ捕縛されて、王の前で処刑されました(20節―23節)。このように、真の預言者は、いのちがけの仕事でした。ただ、エレミヤの場合は、シャファンの子のアヒカムという人物によって保護されたのでした(24節)。
今日の個所から分ることは、主のことばを語ることは、危険を伴う働きであったということです。宗教関係者である祭司や預言者たちでさえ、エレミヤをかばうどころか、民衆に対して、エレミヤを死刑にするように扇動したのです。ここに登場する祭司や預言者とは、いわゆる宮廷の雇われ祭司や雇われ預言者であって、王や時の権力者の顔色をうかがい、彼らの好むことをなす人たちでした。つまり、エルサレムは神の都であるから、絶対に滅びない、そこに住む民は神の民であるから必ず守られる、どんな敵も神が滅ぼしてくださる、というような偽りの預言でした。
エレミヤは真の預言者でしたから、主のみこころを真っ直ぐに語りました。不正や腐敗を指摘し、悔い改めを迫りました。これに対して、時の権力者たちや、不正や利得を得ているもの(その中には祭司や預言者もふくまれる)などは、自分たちの権益を守るために、真の預言者を迫害し、処刑するほどまで堕落していたのです。エレミヤが生きていた時代は、まさに、そのような時代でしたから、エレミヤの働きは、つねに死と隣り合わせの働きでした。
清宣教師
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