今日の26章から28章までの3章は、ツロに対する預言が記されています。今までの諸外国に対する預言と比べると、圧倒的に分量が多いことが分ります。ツロは、それだけ、経済的にも繁栄を誇っていた町であることが分ります。ツロは、エルサレムから北西へ160kmしか離れていませんでした。貿易でツロが傑出していた理由は、地理的な有利な条件がありました。ツロには二つの港がありましたが、ひとつは、海岸線の町にありました。もうひとつは、沖合にある島にありました。その町は、その名(ツロとは、岩のこと)の由来の通り、島の岩の上にきずかれていました。この二つの町は紀元前10世紀、ヒラム一世によって建造された土手道によって結ばれました。これで町の通商能力を2倍にしました。一方で、敵が攻めてきたときには、陸地からの一本道を封鎖することにより、難攻不落の砦である岩の町に避難することが出来ました。ツロはガラスと染物で有名でした。地中海貿易の中心のひとつであり、さまざまな品物を交易していました。一方、エルサレムは陸路の街道筋に位置しており、北のアッシリヤやバビロンと南のエジプトを結ぶ通商上の拠点のひとつでした。ツロは、この商売上の敵であるエルサレムが破壊されるのを見て、あざけり、喜びました。2節に「あはは。国々の門は壊され、私に明け渡された。私は豊かになり、エルサレムは廃墟となった」と言って嘲りました。ここで『国々の門』と表現されていますが、エルサレムは、北と南、あるいは西と東を結ぶ国際通商道路の十字路にあり、独自の通行税を貸すことが出来たので、このような表現がなされていると考えられます。このエルサレムが破壊されることは、ツロの商売が飛躍的に増大することを意味しており、それで、ツロはエルサレムの崩壊を喜び、嘲ったようです。これに対して、主は、3節以降、ツロに対する裁きを宣告されます。その裁きのひとつは、バビロンの王、ネブカデレザルによるツロの攻撃です(26章7節)。実際、ネブカデレザルは、紀元前585年から573年までの13年間、ツロを包囲しましたが、しかし、ついに陥落させることは出来ませんでした。しかし、時代が移り、紀元前332年、ギリシャ帝国のアレクサンドロス大王の攻撃によって、ツロは陥落し、完全に滅亡しました。そして、現在、ツロが存在していた場所は、預言の通り、裸岩となり、漁師が岩の上で網を干している姿がみられるのです(14節)。15節―18節は、ツロの陥落がツロに隣接する君主国の支配者たちに少なからず狼狽をもたらすことを示しています。19節―21節は、島の都市ツロは海の波の下に沈んだ町として描かれています。「穴」とは「よみ」のことで、死の世界を意味しています(20節)。次の27章と28章では、ツロがどれほど高ぶった存在であったかが記されており、そのために主からの徹底的な裁きを受けることが記されています。
この章も、昨日の25章同様、ライバルの失脚を喜んではならないことを教えています。イエス様は、ルカの福音書13章4節、5節で、その当時のエルサレムで起こったシロアムの塔の崩壊事故により18人の死亡者がでましたが、それについて、不幸にあった人たちのことを他人事のように話したり、あるいは、不幸にあった人たちを罪深い人たちのように思って、高ぶってはいけないことを教えられました。「あなたがたも悔い改めないなら、みな同じように滅びます」と言われました。
清宣教師
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