アヒトフェルは、前章で、アブシャロムの側にある人たちの不安や動揺を収めるため、アブシャロムに対して、白昼、全イスラエルの前で、ダビデのそばめたちの所に入ることを提案しました。それが実行されると、全イスラエルにアブシャロムの決意が伝わり、もはや後戻りはないという心を植え付けました。こうして、アヒトフェルは、アブシャロム側の人たちの心を、ダビデに対して立ち向かうという点で、ひとつにまとめました。さらに、今度は、アヒトフェルは、アブシャロムに1万2千人の精鋭部隊を率いて、その夜のうちにダビデを追撃してダビデ王を打ち取りたいと提案をしました。アヒトフェルによれば、ダビデとダビデ側の人たちは、あわてて、都をあとにしたので、不安と疲れがたまっているに違いないので、追撃すれば総崩れになる公算が高く、しかも、ダビデさえ打ち取れば、ダビデ側についた人たちも、もはや反抗する理由はなく、寛大に取り扱うならみな、アブシャロムの側に戻って来るに違いないというのです。しかも、即断即決することにより、ダビデが宮廷内に残した情報網が役に立たないようにするという利点もありました。アヒトフェルの助言はまさに、的確で、これが実行されれば、ダビデのいのちは、まさに危ないところにありました。絶体絶命の崖っぷちに立たされていたのです。そのとき、主が介入されました。アブシャロムは、どういうわけか、アルキ人フシャイの言うことを聞いてみよう、と言い出したのです。早速、フシャイが、アブシャロム王の前に、召し出されました。そこで、アブシャロムが、ご丁寧にも、アヒトフェルが提案した策をフシャイに説明しました。そのときのフシャイの心中は、まさに、アヒトフェルの策があまりにも見事なものであったので、どのようにしてアヒトフェルの策を不採用にすべきか、心の中で必死に祈ったに違いありません。そこで、祈りつつ、フシャイは、アブシャロム王に進言しました。それは、アブシャロム王の自尊心をくすぐり、居並ぶ長老たちや民たちの心をつかむ作戦でした。まさに、アブシャロムがかつて、長老たちや民たちの心を盗むために用いた手段でした。ダビデ王は、戦になれているので、民とは別の場所に身を隠しているに違いありません。それで、ダビデ王を捜すことに手間取っているうちに、アブシャロムの民たちの中に犠牲者がでたら、たとい獅子のような心を持つ力ある者でも、気がくじけるでしょう。百獣の王である獅子を例にして、アブシャロムの側の人たちのプライドを満足させています。さらに、全イスラエルをダンからベエルシェバに至るまで、海辺の砂のように数多くの者たちを集めましょう、そして、アブシャロム王ご自身が全軍を率いて、ダビデを追撃し、もしも、町に逃げ込むようなことがあっても、全イスラエルの民たちで、その町ごと、縄をかけて川まで引きずって行って、その反逆者どもの町には石ころひとつも残さないようにしましょう、と進言したのです。これは明らかに、アブシャロムやイスラエルの民たちを煽てる策であると気付くはずなのに、アブシャロムとイスラエルの民たちは、フシャイの提案に賛成しました。自分たちこそ、勝利者であり、全イスラエルを従えるものである、とのプライドを満足させるものだったからです。もちろん、背後には、主のご計画があり、アブシャロムとイスラエルの民たちが、フシャイの提案に賛成するように、その会議の場を導かれたのです。結局、アブシャロムによって心を盗まれた人たちですから、容易にフシャイの饒舌によって騙されてしまったのです。一方、アヒトフェルは、自分の策が採用されなかったことを知ると、自殺しました。アヒトフェルには、この時点で、アブシャロムの敗北が明白だったからです。アブシャロムを選んでしまった、自分の愚かさに気付いたのでしょう。しかし、時すでに遅し、悔やんでも悔やんでも悔やみきれません。自宅を整理して、首をくくったのでした。さて、フシャイは、祭司ツァドクに情報を伝達し、ダビデを危険地域から移動させました。そして、ダビデのもとには、主の導きで、ショビやマキルやバルジライなどといった、ダビデたちを助ける人たちが出迎えたのです。
今日の個所から教えられることは、人の心を盗んだアブシャロムでしたが、反対に、アブシャロムも、民たちも、敵の饒舌にのせられて、心を盗まれたのでした。親切なことばや抱擁によって自分の仲間を増やしても、それは主のみこころにかなったものではありません。いざという時、サタンの罠にかかってしまいます。真の交わりとは、自分の仲間をつくるためのものではありません。自分にではなく、主に心をむけさせるものです。主を第1とする交わりです。
清宣教師
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