イスラエル王国が南ユダ王国と北のイスラエル王国に分裂してしまいました。北イスラエル王国のヤロブアム王は、イスラエルの王として自己保身のため、金の子牛を作り、勝手に祭司を任命し、偽りの例祭の日を定め、北イスラエルの民を偶像礼拝へと導きました。それを見過ごされなかった主は、ひとりの神の人を、北イスラエルの神殿のあるべテルへと遣わしました。そのとき、ヤロブアム王は、偽りの香をたくため、祭壇のそばにいました。そこで、神の人は、主の命に従い、「祭壇よ。祭壇よ。主はこう仰せられる。『見よ。ひとりの男の子がダビデの家に生まれる。その名はヨシヤ。彼は、おまえの上で香をたく高き所の祭司たちをいけにえとしておまえの上にささげ、人の骨がおまえの上で焼かれる。』」と宣言しました。そして、それが主の預言であるというひとつのしるしを与えると宣言しました。それは、祭壇が裂けて、その上の灰がこぼれ出る、という宣言でした。そのとき、ヤロブアム王は、その神の人を捕えるように家来に命じました、しかし、それを命じたヤロブアム王の手がしなびて、伸ばしたままで、戻すことが出来なくなりました。また、祭壇が裂けて灰がこぼれ落ちました。ヤロブアム王は、そこで、言い知れぬ恐怖に捕えられたようです。あわてて、神の人に、私の手が戻るように、祈って下さいと嘆願しました。そこで、神の人が祈ったので、ヤロブアムの手は元通りに戻りました。そこで、ヤロブアム王は、その神の人を接待しようと願いましたが、神の人は、それを断りました。主から、あらかじめ、飲み食いしてはならないと命じられていたからです。
その後の出来事は、とても不思議な事件で、理解に苦しみますが、現実に起こった出来事です。ひとりの年寄りの預言者がベテルに住んでいました。その息子たちが来て、その日、ベテルで神の人がしたことを聞くと、この父親はすぐにロバに鞍を置いて、神の人のあとを追いかけました。そして、その人を見つけると、神の人を騙して、自分の家に連れてきて食事の接待をしました。神の人は騙されて食事をしてしまいました。それは、その老人が預言者であり、主からの命を受けてきたのだと、語ったからです。自分よりも年上の先輩の預言者のことばですから、疑うことをしなかったようです。しかし、主が、神の人に対して、主のことばに背いた罪の罰として、「あなたのなきがらは、あなたの先祖の墓には、入らない。」と宣告しました。そして、神の人は、そのあと、帰り道、ライオンによって食い殺されてしまいました。それを知った年寄りの預言者は、自分の町にその遺体を持ち帰り、いたみ悲しんで、自分の墓に葬りました。預言者の仲間たちだったのでしょう。「ああ、わが兄弟」と言って、その神の人のために悼み、悲しみました。また、年老いた預言者は、息子たちに「あの人が主の命令によって預言したことは必ず成就するから、私が死んだらあの神の人の骨のそばに私の骨を納めてくれ。」と頼みました。実は、それから約300年後に、この神の人の預言が成就しました。列王記、第2、23章15節~18節に記されています(関心のある方は、その個所を読んでみて下さい)。さて、神の人の警告があり、実際に、祭壇から灰がこぼれ落ちるというしるし、また、自分の片手が萎えるという経験もさせられましたが、ヤロブアムは悪い道から立ち返ることをせずに、悪事をつづけたので、ついには、ヤロブアム家は、地の面から根絶やしにされることが決定的となりました。
今日の個所から、一つは、主は憐み深く、道を踏み外したときに、警告を与えて下さる方だということです。そのとき、主からの警告に謙遜に耳を傾けるなら、罪赦されて、幸いな道を再び歩むことが出来るのです。ヤロブアムのように、頑なになってはいけない、というのが一つのメッセージです。もう一つは、年老いた預言者の不思議な行動です。最後まで読むと、この預言者は、邪悪な心からではなく、おそらく、自分も預言者として、神の人に尊敬の思いがあったのではないかと推察されます。偶像礼拝の北イスラエルの中で、敢然と立ちあがり、主の命に従い、ヤロブアム王に主からのメッセージを伝えたのです。おそらく死を覚悟しての行動だったと思われます。自分も預言者であるが、そのような行動をとることができないことを覚えて、なんとか、自分の家に招いて交わりの時を持ちたかったようです。しかし、自分の行動が原因で、神の人はライオンに食い殺されてしまいました。そこで、せめてその亡骸を墓に葬るために、自分の町に持ち帰り、自分も死んだとき、その方のそばに葬るように命じました。邪悪な思いはなかったとはいえ、偽りは、恐ろしい結果を刈り取ることになります。偽りは自分の尊敬する人をも傷つけてしまうものです。偽りのない生活を目指して、お互いに、お祈りしたいと思います。
清宣教師
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