きょうの32章の時代背景は1節に記されています。ユダのゼデキヤ王の第10年のことでした。エルサレムはバビロンの軍勢により包囲されていました。一方、エレミヤはユダの王の家にある監視の庭で監禁されていました(2節)。その理由は3節―5節に記されています。つまり、エレミヤの預言が、反バビロン政策を採用していたゼデキヤ王をはじめ、反バビロン派の指導者たちにとって、敵であるバビロンに利するものであり、エレミヤに対して反逆者あるいは非国民的という烙印を押していたからです。その背景に関する詳細はエレミヤ書37章に記されています。ですから、歴史的な順序からすれば、この32章は、37章のあとに続くものです。
さて、エレミヤ書32章の全体は、「エルサレムは買い戻される」というテーマで貫かれています。
1節―15節は、土地の買戻しです。ユダの王国は滅亡寸前であり、バビロンの勢力が南ユダの地に及んでいることを考えると、いま、土地を買い求めるなどと言うことは狂気のさたでした。しかし、おじのハナムエルがエレミヤに対して、アナトテの地を買い取って欲しいと求めてきました。これが主の御計画であると悟ったエレミヤは、多くの証人の前で正式の手続きを踏んで土地を購入して、購入証書を受け取りました。それをバルクに保存するように命じました(1節-15節)。
16節―25節はエレミヤの祈りです。『ああ、神、主よ。まことに、あなたは大きな力と、伸ばした御腕とをもって天と地を造られました。あなたには何一つ出来ないことはありません。』(17節)。こうして、エレミヤは、主の前に、これまでの主の憐みに感謝し、なおも、主の御声に聴き従わなかった罪ゆえに、バビロン軍により包囲されている事実を認めています。そのような預言の成就の中で、南ユダの土地はバビロンの支配のもとになるにもかかわらず、なぜ、あなたは、あの畑を購入するようにと言われたのですか?」と主に祈ります。
26節―44節において、主はエレミヤの祈りに答えられました。「見よ。わたしは、すべての肉なる者の神、主である。わたしにとってできないことが一つでもあろうか」(27節)と言われました。それから、主は、偶像礼拝の罪に陥った南ユダの民に対する刑罰として、必ず、バビロンの手に渡すことを宣言しました。とくに、28節―35節において、主の御思いが記されています。「わたしが命じもせず、心に思い浮かべもしなかった」ような悪事の数々を、神の民であると自認する者たちの手によって行われていたのです(35節参照)。だから、南ユダの指導者も民たちも必ず裁きを受けなければならないのです。しかし、36節以降、回復の約束が語られます。そして、遂には、バビロンの手に渡されたユダの町々、山地でも、低地でも、畑が銀で購入されるようになる時が来ること、繁栄を元通りにするという約束を語られました。
32章は、実際の土地の購入(エレミヤによる買戻し)から始まり、将来の南ユダの捕囚からの解放(主による南ユダの民の買戻し)について記しています。
主は裁きをなされますが、それは単なる放棄ではなく、その裁きを通して、悔い改めと立ち返りに結びつくようにとの配慮がなされています。私たちに対する取り扱いもそうです。「すべての問題は祝福の門口です」。主は私たちの前に問題を置かれますが、それは私たちを苦しめるためではなく、私たちを成長させ、祝福するためです。事実、歴史において、南ユダはバビロン捕囚の苦悩を通して、主に真剣に立ち返るようになりました。主に信頼して、主にお委ねしましょう。
清宣教師
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