さて、カナンの地は、ひどい飢饉に見舞われていました。先にエジプトに行って手に入れた穀物は底をつき、再び、穀物を買いに行かなければならない状況に追い込まれました。それは、私たちにとっては、神のご計画の一部であると分っているのですが、ヤコブには分りません。ですから、ベニヤミンをエジプトに連れて行くことに、ヤコブは強く反対します。しかし、ユダが、ベニヤミンのいのちの保証をすると誓います。このユダの責任ある真剣なことばにより、結局、ヤコブも、「全能の神がその方に、あなたがたをあわれませてくさるように。そしてもう一人の兄弟とベニヤミンとをあなたがたに返してくださるように。私も失う時には失うのだ」と言って、ベニヤミンを含めて、10人のこどもたちをエジプトに送り出しました。それだけでなく、先に持ち帰った前回の穀物の代金と今回の代金を併せて、2倍の銀を持って行くように、そして、この地の産物を贈り物として持って行くようにとアドバイスしました。こうして、彼らはエジプトに下りました。
一方、ヨセフは、兄弟たちを自分の家に連れて行き、一緒に食事をする段取りをつけました。他方、兄弟たちは、ヨセフの家に連れて行かれたので、むしろ、恐れに満たされました。何しろ、エジプトの総理大臣が外国からの旅人のために、総理大臣の私邸で食事をすることなど、異例のことでした。それで、彼らは、以前、買い付けに来たときの袋の中にあった銀のこと、今回、その銀を返しに来たことを、ヨセフの家の管理者に話しました。しかし、そのことは、問題にしていないことが分りました。では、いったい、どうして、わざわざ、総理大臣の私邸につれてこられたのでしょうか。そうこうするうちに、シメオンが兄弟たちの所に連れて来られました。そして、昼になり、ヨセフが私邸に返ってきたとき、兄弟たちは、用意してきた贈り物を家に持ち込み、地に伏してヨセフを拝みました。ヨセフは父ヤコブが健在であることを確認した後、同じ母ラケルの子である弟ベニヤミンを確認しました。そのとき、懐かしさのあまり、こらえきれずに、奥の部屋に入って泣きました。まだ、兄弟たちに自分のことを明かすには間があったからです。ひとしきり泣いて、落ち着いたあと、奥の部屋から出てきて、みなのものに食事を出すように命じました。そして、ヨセフを除く、11人の兄弟たちを、ヨセフの指図により、年長者は年長の席に、年下の者は、年下の席にすわらせました。もう、その頃はみな壮年になっていたので、外見上は、誰が年上で、誰が年下かは、見極めがつかないはずでした。彼らは、的確に、指図するヨセフに驚いたのでした。ベニヤミンには、他の兄弟たちの5倍の分量でした。ヨセフも、食卓は別でしたが、酒を飲み、良い心地になっていました。
さて、今日の個所で、父ヤコブが、どうしても手放すことが出来ない、最愛の息子ベニヤミンをユダに託して、エジプトに連れて行くことを許しました。断腸の思いでの決断でした。この父と愛する子の物語は、御父と御子の物語を思い出させます。天の父は、御子イエスをこの地に送りました。ヤコブには12人の子がいましたが、天の父にとっては、御子は一人子でした。ヤコブがベニヤミンを遣わすときには、必ず死ぬとは決まっていませんでした。しかし、天の父が、御子を送りだすときには、全人類のために贖罪の死を遂げることが決まっていました。父ヤコブは、こどもたちから、説得されてしぶしぶ承知しました。しかし、天の父は、ご自分から御子をこの地に遣わしたのです。今日の個所にも、天の父と御子の犠牲のことが隠されているのです。
きょうも、御子を私たちのために遣わされた天の父の愛を覚えて、天の父と御子に感謝しつつ、生活しましょう。
清宣教師