29章から32章にかけてはエジプトに対する7つの預言が記されています。29章の1節―16節では、ナイルのわに(竜)と呼ばれているエジプトが高慢になり「ナイル川は私のもの、私が造った」と大言壮語するようになり(3節後半、9節)、まことの創造主である神の裁きをうけることになったことを描いています。これはエジプト王パロ・ホフラが、ペリシテ人のガザを占領し、パレスチナの全域を勢力下におき、カルケミシュの戦いで失った所を回復し、25年間、勝利に次ぐ勝利をおさめた頃、彼は神さえ自分を破ることはできないと公言していた時のことを描写していると思われます。しかし、紀元前586年、彼はバビロンの王ネブカデレザルの攻撃によって打ち破られて、国は荒廃し、彼自身は家臣に絞殺されました。そして、40年の後、いくらか国力を回復しましたが、紀元前525年にはペルシャのカンビュセス2世によって征服されペルシャ帝国に組み入れられました。こうして以前のような強大な国にはなれないという預言が成就しました(13節―15節)。次に、17節―21節の預言は、バビロン王ネブカデレザルがツロを攻撃したが、なんの報いもなかったのでエジプトを与えるという預言です。この預言は第27年1月1日(紀元前571年)の日付があり、エゼキエル書の中で最も新しい預言です。ネブカデレザルのエジプト遠征は紀元前586年なので、その3年前に与えられた預言です。ネブカデレザルはエルサレム滅亡の翌年から13年間、ツロを攻撃しましたが、その島の要塞を落とすことは出来ませんでした。その間、兵士たちは、包囲のための土木工事のために、頭ははげ、肩はすりむけたにもかかわらず、なんの報いもありませんでした。それゆえに、主はご自分のしもべとして働いたネブカデレザルに対して、ツロの代わりにエジプトの富を与えると約束されたのです(19節)。
清宣教師