4章では、(1)種まきのたとえ(1節~20節)、(2)「あかりの例え」(21節~23節)と「はかりの例え」(24節~25節)、(3)「作物のたとえ」(26節~29節)と「からし種のたとえ」(30節~34節)、(4)嵐を静める奇蹟(35節~41節)が取り上げられています。
すでに、種蒔きの例えなどは、マタイの福音書(13章1節~23節)で取り上げられていましたので、少し、別の視点から紹介したいと思います。私は牧師になる前は、東北大学農学部の作物学の研究室におりましたので畑を用いて試験を行った経験があります。ひと夏で4メートルにも達する成長の速い作物があります。茎の中にショ糖をためる性質があり、スイートソルガムと呼ばれています。主な用途は家畜の飼料です。ところが、石油ショックを契機として、エチルアルコールを生産する植物として見直されるようになりました。それは、ショ糖を発酵させてエチルアルコールを生成して、それをガソリンに混ぜることによりガソホールとして利用することが出来るので、石油の消費を10%程度、抑えることができるというものです。
5月に、畑にスイートソルガムの種をまいて栽培すると、10月には4メートルを超える背丈となり収穫することが出来ます。実験の目的は、雑草を防除しない場合、雑草を防除した時と比べて、どのくらいの収量が得られるか、という実験です。両者に大差がなければ、雑草防除の大きな手間を省くことが出来るというわけです。さて、10月の収穫期になると、雑草を防除しない畑も、雑草を防除した畑も、遠くから見ると4メートルを超える堂々とした姿となりました。まったく違いはなさそうに見えました。ところが、外見は同じでも、雑草を防除した畑のスイートソルガムの穂には、ぎっしりと実が詰まっていたのに、雑草を防除しなかった畑ではスイートソルガムの穂はからっぽの実ばかりでした。つまり、イエス様の例え話のなかで、いばらの中に蒔かれたものと同じでした(7節、18節)。私が驚いたのは、雑草を防除した場合と防除しなかった場合、両者とも外見は堂々として見分けがつかなかったのに、実をしらべたら、その差が歴然としていたことです。世の心遣いや、富の惑わし、その他いろいろな欲望が入り込むと、外見上は堂々とした人生かも知れませんが、イエス様が指摘されたように、霊的な実を結ぶことがないものとなってしまうのです。やはり、いばら(雑草)は、取り除かれなければなりません。
もうひとつ、26節~29節の例え話も、作物学と関係がありますので、ふれておきます。大学院時代、イネや小麦などイネ科作物の成長と発育に関する論文を読んだことがありました。当時の生物学の成長と発育の研究者は、植物の発育を、栄養成長期(葉や茎の成長期)とそれに続く生殖成長期(花の成長期)のふたつに分けていました。それが当時の常識でした。ところが、オーストラリアの小麦の作物学者が、イネ科作物の場合は、栄養成長期(葉や茎の成長期)、生殖成長期(花の成長期)にくわえて、稔実期(穂の中に実が成長する時期)を加えることを提案しました。じつは、この提案により、イネ科作物における成長と発育に関する研究が飛躍的に進展しました。この3つの時期に分けることは、20世紀の半ばにおいて作物学の研究者が発見したことですが、すでに、イエス様は例えの中で、はじめに「苗」、次に「穂」、次に穂の中に「実」という3つの時期に分けていたのです。これは、それぞれ、「栄養成長期」、「生殖成長期」、「稔実期」に相当します。これは驚きでした。私からすると、イエス様は、作物学研究の分野でも第1人者であったのです。
創造主なるお方の片鱗を見る思いです。ハレルヤ!
清宣教師
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