最後から2番目の書簡に入りました。ユダの手紙です。聖書にはユダの名前が複数登場します。誰なのでしょうか?もちろん、イエス様を裏切ったイスカリオテのユダではありません。12使徒のもうひとりのユダ(ルカの福音書6章16節、ヤコブの子)でもありません。何故なら、自分を使徒として紹介していませんし、17節で、「使徒たち」という表現を用いていますから、自分は使徒ではないとしています。ヤコブの兄弟と書いてあります(1節)。ヤコブも何人かいますが、この当時、「ヤコブ」といえば誰でもわかったとするなら、エルサレム教会の指導者であったヤコブと考えられます。ヤコブは使徒ではありませんでしたが、イエス様の兄弟として、使徒のような権威を持っていました(使徒の働き15章13節参照)。すると、ヤコブの兄弟であるユダとなると、イエス様の兄弟のひとりということになります。確かに、マタイの福音書13章55節には次のように記されています。そこではイエス様の郷里の人たちが語ったことばが記されています。「この人は大工の息子ではありませんか。彼の母親はマリヤで、彼の兄弟は、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではありませんか。」ここに、ヤコブ、ユダという名前が登場します。どうやら、イエス様の兄弟たちは、家族として生きている時は、イエス様を救い主として信じてはいませんでしたが、イエス様が復活して、ご自分の神の御子としての栄光を現された後、イエス様を信じたようです。今日の1節には、「イエス・キリストのしもべ(奴隷)」という表現を用いています。この手紙を書くに至った動機は、3節に記されています。聖徒にひとたび伝えられた信仰のために戦うように勧めるためでした。ユダの手紙の内容は、ペテロの手紙、第2と良く似ています。表現がそっくりの個所があります。それで、ユダは、ペテロの手紙、第2を読んでいたと考えられています。年代としては、ペテロの手紙、第2が書かれて、しばらくののちに書かれたと推測されます。それで、この手紙は、紀元後60年から80年の間に書かれたと推測されています(年代を正確に同定することは難しいようです)。内容的には、偽教師たちが教会に入り込んでいるので、戦うように勧める手紙です。じつは、パウロもエペソの長老たちに同じ警告を与えています。使徒の働き20章29節、30節です。「私が出発したあと、凶暴な狼があなたがたの中に入り込んで来て、群れを荒らし回ることを、私は知っています。あなたがた自身の中からも、いろいろな曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たちが起こるでしょう。」また、ペテロも警告しています。「しかし、イスラエルの中には、にせ預言者も出ました。同じように、あなたがたの中にも、にせ教師が現れるようになります。彼らは、滅びをもたらす異端をひそかに持ち込み、自分たちを買い取ってくださった主を否定するようなことさえして、自分たちの身にすみやかな滅びを招いています。」(ペテロの手紙、第2、2章1節)。その警告の通り、教会の中に偽教師たち、偽りの教えが入ってきたのです。それで、ユダは、使徒たちが警告していた通りのことが起こっていることを教会に思い起こさせて(17節)、まことの福音の信仰に堅くたって(20節)、偽りと戦うように勧めているのです(3節)。私たちの教会でも同じです。見せかけの信仰に惑わされてはならない、権威あるものを軽んじ、そしるものは、必ず、神の裁きをうけるのだと警告しています(8節)。そして、私たちひとりひとりに勧めています。「愛する人々よ。あなたがたは、自分の持っている最も聖い信仰の上に自分自身を築き上げ、聖霊によって祈り、神の愛のうちに自分自身を保ち、永遠のいのちに至らせる、私たちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。」(20節、21節)。

清宣教師