イエス様は、御国の福音宣教のために、ご自身の権威と力とを12弟子たちにお授けになり、その働きを倍加されました。そして、宣教にあたり、諸注意を与えられました。12人の弟子たちは、村から村へ、福音を宣べ伝え、病気を治して、イエス様のもとに帰ってきました。それで、イエス様は彼らに休息を与えようとして、ひそかにベッサイダという町へ退かれました。ところが、群衆たちは、いち早くその情報をキャッチして先回りして、イエス様についてきました。それを知ったイエス様は、がっかりされるどころか、逆に喜んで迎えられた、と記されています。必要を覚える人たちに対して、その必要を満たされるのがイエス様にとっての喜びであったようです。さて、群衆たちは、食べ物のことも考えずに、ひたすら、イエス様の後を追いかけて、みことばを聞いていました。ところが、日が暮れてきました。それで、弟子たちは、群衆を解散させて近くの村に、宿をとらせて何か食べることが出来るようにしてほしいとイエス様に願いました。そして、4福音書すべてに記録されているところのイエス様による男だけで5千人の給食の奇跡がなされました。女や子供を含めると1万人と推定されています。イエス様の指示に従い、弟子たちは群衆を50人ぐらいのグループに分けて、緑の草地の上に座らせました。そして、イエス様は5つのパンと2匹の魚をとり、天を見上げて祝福したのち、群衆に配るように弟子たちに渡しました。弟子たちが、それぞれのグループに行き、パンと魚を分かちあうと、それは弟子たちの手の中で大きなパンと魚になり、群衆たちは、腹いっぱいになるほど、食べました。弟子たちの感激はどれほど大きかったことでしょう。自分たちの手の中で奇跡が起こったのです。イエス様は創造主です。無から有を生み出すお方です。ここではパンからパンを、魚から魚を生み出されました。人々の霊的必要だけでなく、肉体的な必要をも満たされました。しかも、あまりものが12籠にいっぱいになるほどでした。
さて。これらのことののち、イエス様はご自分を誰だと思うかと、弟子たちに尋ねました。弟子たちを代表して、ペテロが「神の子キリストです」と告白しました。こうして、弟子たちの訓練の最大の山場を越えることが出来ました。そこで、イエス様はこれまで秘密にしてきたところのご自分の使命を弟子たちに明かされました。それはやがて、長老や祭司長たちに殺されること、そして、三日目によみがえるということでした。さらに弟子たちにも、自分を捨て、日々自分の十字架を負い、イエスに従う覚悟が必要であることを明らかにされました。いよいよ、弟子訓練も後半へと入っていくのでした。
ところで、不思議なことをイエス様は言われました。「ここに立っている人々の中には、神の国を見るまでは決して死を味わわない者たちがいます」。そのあとに「変貌の山」と言われる出来事が起こります。イエス様は、ペテロとヤコブとヨハネの3人の弟子たちを選び、山に登られました。すると、旧約聖書のモーセとエリヤが現れました。そこで、モーセとエリヤは、イエス様のご最期について打ち合わせをされました。イエス様の御顔も栄光に輝き、その御衣も栄光に包まれて輝いていました。神の国の到来です。そこに3人の弟子たちが立ち会うことを許されたのです。まさに、この3人は、神の国を見る特権にあずかることが出来たのです。これをもって27節のイエス様のことばの成就であると、解釈するようです。(次ページへ続く)