さて、最初の例え話に登場する商品は、油と小麦の収穫物でした。当時、オリーブ(油)や小麦の収穫物は、年によって豊作のときもあり、凶作のときもあります。ある意味、そうしたリスクを含めて貸し借りが行われていました。歴史家の研究によると、当時の小麦の利子は20%、また、オリーブ油の場合は、利子が80%と非常に高く、それにリスクとして20%が上乗せされて合計すると100%の利子がかかっていたと言われます、つまり、オリーブ油の場合は、2倍にして返さなければならなかったわけです。この例え話で疑いをかけられた不正な管理人がとった行動は、主人の債務者を呼んで、「油100パテ」を「油50パテ」に書き換えさせ、「小麦100コル」を「小麦80コル」に書き換えさせました。つまり、無利子にしてやったということです。主人は、この管理人が主人の財産を用いて、自分の友達をつくったことを賢いと認めました。もし主人が、この管理人を、勝手に利子をゼロにしたといって訴えても、日ごろ、高利をむさぼっていたことが明らかになります。評判を著しく落とすことになります。こうも抜け目なく、自分の有利になるように仕向けた管理人の頭の良さには主人もさすがに脱帽したということです。それにしても、この例え話が意味するところは、この世の富は不正の富であるとしても、それを用いて、天国に宝を積むことが出来るということを示しています。お返しすることが出来ない人々に、この世の富を用いて助けるなら、やがて、天において報いを得るのです。その人たちが天の御国にむかえてくれるのです。この世の富をいかに、主のみこころにそって用いるかが問われるのです。この世の富であっても、それを忠実に用いることが求められています。そして、それを忠実に用いる時に、主は天国の多くの物を任せると約束されているのです。
次に、金持ちとラザロの話が紹介されています。ある注解者は、イエス様のたとえ話の場合、登場人物は、一般名称で紹介されているのに対して、このお話では、最初こそ「ある金持ち」という言い方をしていますが、お話の中では、具体的な固有名詞、「ラザロ」や「アブラハム」という人物の名前があげられているので、イエス様が実際に見聞きしたお話であると解釈しています。生前、金持ちは贅沢に不自由なく暮らしていました。一方で、ラザロは全身おできで貧しく、金持ちの門前で路上生活をしているのでした。さて、金持ちが死んでハデス(神の救いに入れずに死んだ者たちの行く場所)にいると、はるかかなたにラザロがアブラハムのふところ(別名、パラダイス)にいるのが見えました。ここは、神の救いに入れられた者たちが死んだのち行く場所であり、あのラザロがその場所にいるのが見えたのです。そこで、金持ちはアブラハムに執り成しを求めますが、それは聞かれませんでした。ハデスとパラダイスの間には、誰も超えることが出来ない淵(境界線)があったのです。それで、金持ちは、自分の兄弟のために、ラザロを生き返らせて、兄弟たちにこのようなハデスに来なくてもよいように、兄弟たちのところに送ってほしいと願いました。しかし、アブラハムは、聖書の教えに聞く耳をもたないなら、たとい死者が生き返っても、彼らは聞く耳を持たないのだ、と断言されました。イエス様は、このお話を通して、人は、生きているうちに、神のことばに心を開き、救いの福音を信じる以外に、救いの道がないことを示されました。死んでからでは遅いのです。一方で、この世には、どうしても納得できない矛盾や理不尽なこと、不当なことなどが存在します。しかし、それは死後の神の裁きにおいて正当に報われるのです。この世で不当な仕打ちを受けたもの、虐げられたもの、何も報われなかったものは、必ず、神の豊かなねぎらいと慰めと限りない報いを受けるのです。そのために永遠のいのちが備えられているのです。天の御国はそのひとのものです。
主の御霊は、私たちのうちに豊かな御霊の実を結ばせてくださいます!
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