パウロは、ユダヤの国会(サンヘドリン)で弁明の機会を与えられました。その議長は大祭司アナニヤでした。紀元47年に大祭司として任命されたネデベウスの子、アナニヤは大祭司の職を手にするために世俗的な画策をした悪名高い人物でした。パウロは、大祭司がパウロの口を打てと命じた時に、反論しました。それは強烈なことばでした。アナニヤは、まさに、外側をしっくいで白く塗っていかにも堅固な壁にみせかけている「白く塗った壁」でした。パウロは、「私は彼が大祭司だとは知らなかった。・・・」と弁明していますが、これは強烈な皮肉のようです。それから、議会を見渡して、国会議員の一部がパリサイ人、一部がサドカイ人なのを見て、「私はパリサイ人であり、私は死者の復活という望みのことで、さばきをうけているのです」と叫びました。当時のサドカイ人は大祭司をはじめ祭司たちの多くを占めていましたが、じつは世俗的な人々であり、み使いや奇跡や復活を信じない人たちでした。超自然的なことを否定する現実主義者で、現実の利益を求める富裕な人たちでした。一方、パリサイ人たちは、聖書にしるされている、み使いや奇跡や復活を信じる宗教に熱心な律法を重んじる人たちでした。ですから日ごろから対立するふたつのグループでした。それを見抜いたうえでのパウロのことばでしたから、国会の審議は、真っ二つに分かれての激しい論争を引き起こしました。あまりにも論争が激しくなったので、千人隊長は、パウロを国会の場から力づくで引き出し、兵営に連行しました。さて、もろもろの取り扱いを受けて体力をも消耗していたパウロですが、主がパウロのそばに立って、「勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように。ローマでもあかしをしなけらばならない」と語られました。この主のことばは、パウロがローマでも証しをすることが、主のご計画であること、つまり、ローマで証しするまで主がパウロの身を守られるという約束のことばでもあります。これで、パウロは、どんなに励まされたことかと思います。さて、夜が明けると、ユダヤ人たちのある者たちは、パウロを暗殺するという陰謀を企てました。ところが、その暗殺の陰謀をパウロの姉妹の子(パウロの甥)が知るところとなりました。それでその甥はパウロに知らせました。パウロは百人隊長を介して、千人隊長のもとに甥を連れて行かせ、千人隊長にユダヤ人のパウロ暗殺の陰謀を知らせました。千人隊長は、万全のパウロの警護体制を立てて、ひそかに、夜のうちに実行しました。歩兵200人、騎兵70人、槍兵200人という、ものものしい警護体制でした。こうして、パウロは100キロ離れたカイザリヤの地まで安全に移送されました。そのとき、千人隊長のルシヤは、総督に対して手紙を書きました。その内容は、①パウロが訴えられているのは、ユダヤ人の律法に関するもので、ローマ法では死刑や投獄にあたる罪は見いだせなかったこと、②ユダヤ人がパウロの暗殺を企てていたこと、③訴える者たちには、総督の前で訴えるように言い渡したこと、という3点でした。ただ、前書きとして、自分があたかも、ローマ人のパウロを救い出したかのような功績を宣べていることはいかにも、世俗の千人隊長という感じです。さて、総督ぺりクスは、パウロに出身地を尋ねました。タルソはキリキヤ州に属します。それで、キリキヤ州を管轄するシリヤの総督に委託するべきか、それとも自分の管轄であるとして自分の責任で裁判を行うべきか、考えたようです。結論として、自分の管轄下の事件として裁判を行う決断をしたようです。それで、パウロの身柄をヘロデの官邸で守るように命じました。今日の個所では、名もないパウロの甥が、パウロを救い出す役割を担いました。全世界を治める全能なる主は、あらかじめ、名もない人物を備えてご自分の計画のために用いられるお方です。
主はあらゆる方法で、私たちに語り、私たちを導かれるお方です!
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