ヤコブは、故郷を目指して旅を続けました。それは長年の夢であった故郷への帰還でしたが、同時に、大きな不安がありました。そもそもヤコブが故郷を離れたのは、エサウの恨みをかったからです。20年の歳月が過ぎているとはいっても、憎しみが消えているのか、あるいは、むしろ憎しみに燃えているのか、まったく、見当がつかないままの帰還でした。ラバンのところに帰ることは出来ません。前進あるのみです。そのような不安の中にあるヤコブを励ますように、神の御使いが現われました。それは二手に分かれた天使たちの大軍勢でした。ヤコブは、その地を「マハナイム(二つの陣営)」と名づけました。主なる神は、ふたつの天使たちの大軍勢を見せて、ヤコブよ、大丈夫、わたしが守る、と言って下さったのです。ところが、ヤコブは、天の大軍勢を見ても、不安はなくならなかったようです。あらかじめ、エサウのところに、使者を遣わすことにしました。エサウの様子を偵察するためでした。使者には、エサウにあった時に、エサウを「私の主人」、ヤコブを「あなたのしもべ」というように命じました。エサウの心を少しでも寛容にするための策であったと思われます。しかし、使者の報告は、エサウは400人のもの大部隊を引き連れてヤコブのところに来るというものでした。そのとき、ヤコブの心の中は、非常な恐れと心配にとりつかれました。それで、ヤコブは人間的な策を考えます。まず、自分の財産や持ち物を二つの宿営に分けることでした。そうすれば、片方の宿営が打たれても、片方は助かる可能性があると考えたからです。そして、父祖の神に祈りました。「私はあなたが、しもべに賜ったすべての恵みとまことを受けるに足りない者です。私は自分の杖一本だけをもって、このヨルダンを渡りましたが、今は、二つの宿営を持つようになったのです。どうか私の兄、エサウの手から私を救い出してください。・・」と祈りました。その夜を過ごしてから、兄エサウへの贈り物を選びました、それらの贈り物を、まずは、雌ヤギ200頭、次に雄ヤギ20頭、次に雌羊200頭、次に雄羊20頭、次に、次に、次に、しかもその間をあけて先に進むように命じました。総計550頭以上の大群のプレゼントでした。こうして、エサウをなだめようと考えたのです。それでも、心配は去らず、妻たちや子供たち、自分の持ち物を、自分よりも先に流れを渡らせて、ヤコブ一人、残りました。その夜のことでした。突然、ある人(御使い)が現われて、ヤコブに格闘を挑みました。ヤコブは応戦しました。これがヤコブと御使いとの相撲です。不思議な方法でした。孤独で落ち込んでいるヤコブに対して、主は否応なしに挑戦したのです。ヤコブは考える暇もなく、取っ組み合いで相撲をしました。ヤコブは必死でした。一心不乱に戦いました。それ以外のことは考えられませんでした。これは神との格闘でした。そして、徹底的な格闘でした。これが、ヤコブにとって最も良い解決の方法だったようです。必死の祈りの格闘でした。そしてまた、これは人を変えた格闘でした。御使いは、ヤコブに勝てないのをみて、ヤコブのもものつがいを打ったので、ヤコブのもものつがいが、はずれてしまいました。それでも、ヤコブは、御使いにしがみつき、「私を祝福して下さい」と懇願しました。御使いは、「あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたは神と戦い、勝ったからだ」と言われました。「イスラ」とは戦う、「エル」は神です。神と戦って勝ったという意味です。これは、やがて、神は戦われる、という意味で用いられるようになりました。ヤコブは、顔と顔を合わせて神を見た、という意味で、その場所をペヌエルと名づけました。ヤコブは、ももの負傷で、足を引きずっていました。御使いと戦って勝利するほどのヤコブでした。しかし、もものつがいが外れたので、いまは足を引きずっていました。もはや、生まれつきの優れた体力ではなく、神が戦われることを信じて歩むヤコブへと変わらなければならなかったのです。私たちも、生まれつきの自分ではなく、キリストにあって新しく創造された自分として生きなければなりません。ある意味、年をとって、体力が衰えるのも、イスラエルのように、神により頼み、神が勝利して下さることを信じて歩む人生へと導いておられるのかも知れませんね。きょう、若い人も、高齢者の方も、神のこどもとして、笑顔で歩みましょう。清宣教師
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