21章から24章までは、一般的には付録の部分と考えられています。その理由は、ここに記されている出来事が、時系列ではなく、いつの出来事なのか、明確ではないことです。つまり、今日の個所は、前章の20章のあとに起こった出来事であるとは考えにくいからです。それで、著者が、補足説明しておきたいことを付録として付け加えたので、このようなスタイルとなったと考えられています。
さて、21章の内容は、ダビデの時代に起きた3年間の飢饉でした。主は、なんの理由もなく、民を苦しめるお方ではありません。それで、ダビデは、その理由を示してくださるように、主に願い求めました。主からのお答えは、昔、サウル王が治めていた時代に、主の前で結ばれた契約をサウルが破ったことである、と示されました。じつは、昔、ヨシュアを指導者として約束の地を占領し始めた初期のころ、ギブオン人がイスラエルの民と結んだ契約のこと(ヨシュア記9章22節~27節)でした。ギブオン人が偽りをもってイスラエルの民と契約を結んだのですが、それは主の前で結ばれた契約であり、すでに成立したのものですから、それを取り消すことが出来ないので、イスラエルの民は、ギブオン人たちのいのちを保証しました。それでイスラエル人のしもべとして働くことになったのです。ところが、サウル王は、イスラエルとユダの人々への熱心のあまり、異邦人のギブオン人たちをみな殺しにしようとしたのでした。それで、生き残りのギブオン人たちが、主の前に、契約違反をしたサウル王の罪を贖うため、すでに亡くなっているサウルの代わりに、そのこどもたち7人を自分たちの手もとに引き渡すように要求しました。それで、ダビデ王は、サウルの子たち7人をギブオン人に引き渡しました。ヨナタンの子のメフィボシェテについては、すでに、ダビデとヨナタンとの間に契約がありましたから、それ以外のサウルの子たちを引き渡しました。そして、ギブオン人たちは、その7人を処刑しました。二人の子の母親のリツパは、その子の死体のそばに、荒布を着て座り続けて、遺体が空の鳥や野の獣たちの餌食にならないようにしたのです。その悲しみに打ちひしがれた母親の哀れな姿は、ダビデのもとに報告されました。母親のその姿に同情したダビデは、少しでも、その悲しみを癒す方法を考えて実行しました。それまで、バラバラになっていた、サウルの骨とヨナタンの骨とギブオン人によって処刑された7人の遺骨をみな、サウル家の父キシュの墓に葬りました。先祖代々の墓に手厚く葬られたことになります。そののち、神はこの国の祈りに心を動かされた(14節)と記されています。なかなか、理解することが難しい個所です。原則としては、父の罪は、子に課せられることはないのですが、場合によっては、その罪が、2代目あるいは3代目の子孫まで問われることがあるということです。ところで、21章の後半では、ダビデがペリシテ人と戦っている時、疲れを帯びて、ペリシテ人にあわや殺されそうになったという出来事を通して、家来たちが、それ以後、ダビデが戦場に出るのをやめさせたというエピソードです。そして、イスラエルの4人の勇者の武勇伝が紹介されています。アビシャイ、シベカイ、エルハナン、ヨナタンの4人です。
今日の個所は、私たちの常識ではなかなか理解できないことですが、聖書は、主の契約が破られた時、そこに罪の呪いが生じることを示しています。この場合は、土地が豊かな実りを生じることがなくなったこと、つまり、飢饉というかたちで罪の呪いが表れたということです。そして、その罪を悔い改めて、罪の支払う報酬を支払った時、その呪いは消え去り、再び、主がこの国の祈りに心を動かされたということです。国民と国民との間に結ばれた契約は、主の前で結ばれたものであり、それを破ることはいつか、主からその責任を問われることがあるという事例です。今日の個所を適用するとすれば、私たちの国、そして指導者が、損得勘定で条約を破棄したり、あるいは、サウル王のような行き過ぎた愛国心により、道を誤ることがないように、祈る必要があるということです。
清宣教師
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