ソロモン王から、レハブアム王へのバトンタッチでしたが、残念な結果をもたらしました。あっという間のイスラエル王国の分裂をもたらしてしまいました。レハブアム王は、王に即位してシェケムへ行きました。エルサレムから北へ50kmの町でした。わざわざ、レハブアム王がシェケムまで出向かなければならなかった理由がありました。そこには、北イスラエル10部族を代表するヤロブアムがいたのです。ヤロブアムはもともとソロモン王のもとで仕えていましたが、ソロモンにより危険視されてエジプトに寄留していたのですが(列王記第1、11章26節―40節参照)、ソロモン王が死去したあと、北の10部族がヤロブアムをエジプトから呼び戻したのです。
レハブアム王は、ある程度、事態が悪化していることに気付いたので、わざわざシェケムに出向いたのに違いありません。しかし、それはレハブアム王自身の判断ではなく、ソロモン王に仕える長老たちの助言であったとも考えられます。なぜなら、その後のレハブアム王の行動は、中途半端で、シェケムへ赴きましたが、北の10部族の代表たちの申し入れに対して、長老たちの助言を退け、同世代の若者たちの意見を取り入れて、完全に拒否する回答をもって荒々しく応答したのです。こうして、イスラエルの北の10部族は、レハブアム王の支配から独立して、ヤロブアムを王とする道を選びました。
ソロモン王の全盛時代に生まれ育ったレハブアムは、その背後で、その歪(ひずみ)が王国全体に行き渡っていることに気付かなかったようです。すでに、ソロモン王による善政ではなく、それは権力による暴政へと変質していたのです。北の10部族のことばのなかに、「過酷な労働と重いくびき」(4節)という表現であらわされています。せっかく、長老たちが、正しい助言をしたのですが、後継者のレハブアムは、自分と同世代の若者たちの自信満々の意見にしたがってしまったのです。なぜ、これほど頑なであったのかというと、それは主のみこころであったからです(10節)。つまり、ソロモンの治世の後半の偶像礼拝と暴政の罪の結果を刈り取っているということになります。つまり、ソロモンにもレハブアムにも共通して言えることは謙遜に主の御声に従っていれば、このような悲劇を招くことがなかったということです。
ところで、私たちも常に、何を選択するかという問いに直面させられています。それは、国家的な悲劇をもたらすものではないと思いますが、しかし、人間関係や夫婦関係の分裂、教会の分裂などを引き起こすような選択には直面すると思います。私たちの内側からも、外側からも、多くの声が聞こえてきます。「誰もあなたのことなど気にかけていない」、「みんな間違っている」、「あなたのやりたいようにしたら」、「おまえはダメな人間だ」、「おまえにはお金も時間も能力もない」など、多くの声に取り囲まれています。しかし、私たちが耳を傾けなければならない声は、神様の語りかけです。「わたしはあなたを愛しています」、「わたしはあなたと共にいます」、「わたしのもとで休みなさい」、「わたしが問題を解決してあげます」、「心配しないで、わたしに委ねなさい」。
ヘンリー・ナウエンは次のように記しています。「その御声を聴くには、特別な努力を必要とします。孤独、沈黙、そして聞こうとする強い決意です。それが祈りです。それは、私たちを『わたしの愛する者』と呼んでいる声に耳を傾けることです。」
清宣教師
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