アルタシャスタ王の治世の第20年目のニサンの月のことです(1節)。1章のキスレウの月の出来事から3,4カ月後のことです。西暦で言えば、紀元前444年の3月~4月にかけての出来事です。ネヘミヤは、献酌官として、いつものように、王の前で酒を差し上げました。ところが、王は、「あなたは病気でもなさそうなのに、なぜ、そのように悲しい顔つきをしているのか。・・・」とネヘミヤに言いました。ネヘミヤはその王のことばを聞いたとき、ひどく恐れました。宮中では、隠れた派閥争いなどにより、時に王が毒殺されることもあります。ですから、献酌官は王の信頼をうけているものだけが任務に就きますが、いつもと変わった様子をすることは、とても、危険なことです。ここでは、王がその異変に気付いたのですから、ネヘミヤはとても恐れました。王様から少しでも疑いを掛けられたなら、いのちの危険にさらされます。しかし、神様は、このことを用いて、むしろ、王様の方からネヘミヤに問うことにより、ネヘミヤが、王に願いをのべるように差し向けたのです。ネヘミヤは、心の中の悩みを正直に告白しました。「私の先祖の町が廃墟となり、その門が火で焼き尽くされているのに、どうして悲しい顔をしないでおられましょうか。」それで、王が、「何を願うのか」と尋ねました。ネヘミヤは、今この瞬間に、主の恵みが注がれるように、心の中で、天の神に祈りました。そして、「ユダの地へ送り出し、先祖の墓のある町、エルサレムの町を再建させてください」と願いました。王は快くその願いを受け入れました(6節)。聖書はあえて「王妃もそばに座っていた」と付記していますから、王妃がネヘミヤの願いに好意的であったとも考えられます。主はこうして、ネヘミヤの祈りに応えてくださいました。視点を変えて言うならば、主の御計画の通りに、ネヘミヤが行動したということです。さらに、ネヘミヤは具体的に、休暇の期間、エルサレムの城壁再建のための材料の調達のための王の書簡などを求めて、王に聞き入れてもらいました。
こうして、ネヘミヤは、エルサレムに到着しました。その地はホロン人やアモン人たちの異邦人によって治められていました。彼らは、優位に立ち、イスラエル人を苦しめる立場でしたから、ネヘミヤの来訪を、心の中ではとても嫌っていました。なぜなら、ネヘミヤたちの来訪が、イスラエル人の益となることを願うものであったからです(10節)。
ネヘミヤは、宮中での派閥争いなどを良く知っていましたから、まずは、自分の計画(それは、主の御計画でしたが)を誰にも打ち明けず、早い段階で邪魔が入らないように、秘密裏に、真夜中、エルサレムの城壁の現状を視察しました。そこで、修理のための工程表などを作成するためであったと思われます。そして、大雑把に全体像を把握したうえで、充分、考えを練ったうえで、イスラエルの長老や祭司たち、それに民を集めて、胸のうちにあったエルサレムの城壁再建のビジョンを伝えました。その話の中で、シュシャンの城での王様とのやりとりなどの証しをしました。そして、エルサレムの城壁の再建は主ご自身の計画であり、主の御手が動いているので、必ず、成功させてくださると励ましました。
いざ、工事に着手すると、ホロン人サヌバラテやアモン人の役人トビヤ、それに、アラブ人ゲシェムなどが嘲笑しました。また、「王への反逆」ということばを用いて脅しました。しかし、ネヘミヤは脅しにも、嘲笑にも屈せず、城壁再建に着手しました。
清宣教師