この詩篇110篇は、多様な解釈がなされている詩篇の一つです。おそらく、ソロモン王の即位に際して、父ダビデが歌ったものであろうと考えられています。
1節―3節は、ダビデが主なる神からの啓示のことばを、新しい王である、わが子ソロモンに伝えていると考えられています。ダビデは、新しい王であるソロモンと主の前に礼拝したのだと思われます。2節の[杖]とは権威の象徴です。3節の「喜んで仕える」とは「みずからを自発的な供え物として捧げる」という意味です。「朝露のように」とは、突然、多くの勇士たちが従う状態を指すと考えられます。4節は、王の祭司的性格が宣べられています。これは主なる神の厳粛な誓いによる宣言ですから、不変のものです。「メルキゼデク」は、創世記14章に登場しますが、へブル人への手紙5章6節、7章1節以降で詳しく記されています。特徴は、祭司であり、王であることです(通常は、王と祭司と預言者は、別々の職務であり、厳密に分けられていました)。ここでは、祭司であり、王であるということで、特別な王(メシヤ)を意味しています。5節の「右にいます主は・・・王たちを打ち砕かれる」とは、主が戦われることを示し、「御怒りの日」とは「さばきの日」を意味しています。6節は、すべての国に対する裁きの日です(ハバクク書3章12節、13節参照)。7節は、「主」とは、王のことです。従って、敵を追跡する王は、道のかたわらの水で元気を取り戻して追跡を続け、勝利をえます。「頭をあげる」とは「勝利を得る」ことを意味しています。
この詩篇は、主イエスによって引用されています(マタイ22章44節、45節、マルコ12章36節、37節、ルカ20章42節―44節)。また、ペテロによって引用されています(使徒の働き2章34節、35節)。またへブル人への手紙においても引用されています(へブル1章13節)。つまり、イエス・キリストの祭司的王性、復活、昇天に適用されています。詩篇110篇は、代表的なメシヤ預言であると言われています。イエス・キリストの十字架・復活・支配との関連が強く見られます。キリストの支配の永遠性と祭司職が、あらかじめ示されている預言的詩篇です。
以前にもお伝えしたと思いますが、旧約聖書の預言ですが、それは2重、3重の意味を含んでいると言われます。想像してみて下さい。例えば、山登りに行くとします。目の前に頂上が見えます。その頂上を目指して登りきると、そこには、あらたな頂上が現われています。そこで、その頂上を目指して登ります。登りきると、そこにはまた、新たな山頂が見えるということがあります。聖書の預言とは、そのようなもので、現在の時点での預言だけでなく、さらに未来の預言、さらには終末時代の預言が含まれているということです。
この詩篇110篇で言えば、目の前の山頂とは、ソロモン王の即位であり、その奥にある山頂の姿とは、御子イエスの誕生、十字架、復活であり、さらにその奥の山頂の姿とは、世の終わりの裁きにおけるメシヤによる完全な勝利の姿を描いていると言えます。どれが、いつの時代の姿を、あらかじめ示すものであるか判断するのは難しいですが、山頂に到達するたびに、まだ成就していない部分については、これから成就する預言の部分であることが分ります。そういう意味では、ソロモンの時代、御子の受肉、贖い、復活、昇天はすでに成就しているのですから、残されている預言は、これから終末の時代に成就するということになります。主は再び、来られます。マラナタ。
清宣教師
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