6章では、子どもとしての生き方、奴隷としての生き方、主人としての生き方について述べて、最後に、究極の戦いである、暗闇の支配者サタンの策略に対する霊的な戦いのあり方について述べています。まず、親と子の関係です(1節~4節)。「子どもたちよ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことだからです。」と記しています。これは、十戒の中では第5番目に出てくる戒めです(出エジプト記20章12節)。十戒は前半が神との関係、後半が人との関係についての戒めとなっており、人との関係の戒めの中では、最初の(第1の)戒めとなっています。それで、パウロは第1の戒めと述べています。また、この戒めには、祝福の約束が伴なっています。「そうしたら、あなたはしあわせになり、地上で長生きする」という約束です。家庭内での父親の役割は、子供たちに対して父なる神のイメージを正しく伝える役割を担っていることです。子供たちにとって、父親は何でもできる存在であると同時に、自分を守り、自分を愛してくれる存在であることを通して、やがて、父なる神との出会いによって父なる神をスムーズに受け入れることになります。しかし、もしも、父親が冷酷で、自分に対しても無関心であるなら、父なる神を受け入れることの障害物となってしまいます。ただし、子供を甘やかすことではありません。「主の教育と訓戒によって育てなさい」と記されています。同時に、「父たちよ。あなたがたも、子どもをおこらせてはいけません」とも記されています。子供を怒らせるとは、案外、父親が無意識にしていることではないでしょうか。例えば、物事を正しく認識することをせず、自分の感情で判断してこどもを叱る場合がそうです。あるいは、自分自身が守っていない基準をこどもに押し付け、要求する場合があります。あるいは、こどもの人格を無視して、親の願望をこどもによって達成しようとしていることが明らかな場合などがあります。しかし、ここで述べられていることは、「主の教育と訓戒によって育てなさい」ということですから、親自身も、その対象となっているのです。親自身も、主の教育と訓戒に従って生活することによって成り立つのです。次に、主人と奴隷の関係です(5節~9節)。当時のローマ帝国の時代には、膨大な数の奴隷が存在していました。奴隷に対しては、天の御国においては、奴隷という身分は存在しないのですが、この地上では、主人と奴隷の身分関係が存在しているので、奴隷は、主のしもべとしてキリストに従うように、主人にも従うように勧めています。また、主人に対しては、人を差別することがない主の前で、主のしもべとしてふさわしく、奴隷に対して接するように勧めています。神の国の家族という共同体では、ユダヤ人とか異邦人の区別はなく、奴隷とか主人の区別もなく、ひとつの家族、一つのからだに属するものです。そのような共同体の一員として、この世においても、ふさわしく生活するように勧めています。最後に、教会がこの世に存在する限り避けられない、霊の戦いについて言及しています(10節~20節)。この世における教会の使命について、「私たちの格闘」(12節)と述べています。この戦いは、血肉つまり人間との格闘ではなく、この世の思想や行動の背後にある、この世を支配している悪魔との戦いであり、また、天にいる悪魔の手下のもろもろの悪霊との戦いです。戦う相手は、人間や人間が用いる手段に対してではなく、その背後にある悪魔です。これらの目に見えない霊的な相手に対しては、霊的な武具をもって戦う必要があります。まず、神の大能の力によって強められる必要があります。そして、神のすべての武具をとることです。武具には、防御用と攻撃用があります。その中で、攻撃にも、防御にも大事な役割を果たすのが、「御霊の剣である、神のみことば」です。この戦いは、クリスチャン個人としての戦いであり、また、教会としてのすべての聖徒たちの戦いです。悪魔のささやきに一度、心を開いてしまうと、一つまた一つと心の砦を奪われてしまいます。最初は天使のささやきで誘惑して、最後に暴君としてすべてを支配してしまうのです。ですから、私たちは神の家族としての共同体の一員として、お互いに祈り合う必要があります。またパウロ自身、「私のためにも祈ってください。」と勧めています。つまり、兄弟姉妹のための祈りに加えて、教職者のためにも執り成しの祈りが必要です。最後の部分(21節~24節)では、エペソの教会の兄弟姉妹達が、パウロ一行の様子を知り、心に励ましを受けるようにしてほしいとの願いをしたためています。そして、「主イエス・キリストを朽ちぬ愛をもって愛するすべての人」と呼び、エペソやアジアの地域を超えて、また、時代を超えて、主の教会に属するすべての読者を想定しているように思われます。
神はみこころに従い、からだの中にそれぞれの器官を備えて下さいました!
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